「「心残りとの折り合い」の空気感に浸る」柳川 prishouさんの映画レビュー(感想・評価)
「心残りとの折り合い」の空気感に浸る
チャン・リュル監督の作品は、静かに始まり、特段の事件が起こるわけでもなく、突然、終わりを迎える。そのため、どのように評価すればよいのか、戸惑う。
『柳川』は、『群山』(’18)『福岡』(’19)と合わせて「福岡三部作」と呼ばれるが、今回、本作の上映と合わせてこの三作品を同時期に観ることができたことで、チャン・リュル監督作品の空気感に浸ることができた。
パンフレットの中で東山彰良さんが「心残りとの折り合い」と表現しているのが、わかりやすい。過去の「心残り」にどうやって折り合いをつけるか。これは人生の大きなテーマかもしれない。観ているうちに、自分自身の過去の「心残り」を思い出し、胸がチクリとする。
そんな感情を、チャン・リュル監督は、慌てず、ありのままを丁寧に描く。まるでドキュメンタリー映画のように。
なるほどチャン・リュル監督は、事前には台本というものがなく、大まかなあらすじだけがあり、現場でセリフや演出を決めていくのだそうです。
まさに「空気感」を作っていたんですね。
そして、そんな空気の中では、日本、中国、韓国の言葉が入り乱れてもお互い何となく通じ合い、結局は人として何ら違いはないということを改めて思い出させる。そんなボーダーレスな作品。
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