【MISSING】
この世の中の無情な部分が凝縮されたような話でした。
翔の様な目に遭ったら、悲しみの余り、私も同じようなことをしかねないと思います。
また、家族の1人が世の中に否定されるような何か大きなことをすると、他の何もしていない家族まで同じ目で見られてしまう。
同じ血が通っていても、別々の人間であることに気付けない世の中の物悲しさ、また、否定されるようなことをしていても、それは表面上の話であり、そこへ至るまでのことは誰も知ろうとしない物悲しさを感じました。
そんな苦しい状況でも、やはり、兄弟・家族・血が繋がった2人を描いた作品だったと思います。
答えを出すには難しい話でしたが、何かが変わりそうな最後に希望が持てました。
【ミスりんご】
出だしが、凄くアングラで嫌な展開になっていく映画なのだろうか。。と、構えてしまうのですが、凄くコミカルな映画で驚きました。
主人公の一人・健二が事あるごとに「地元だから」と焦燥する姿や、もう一人の主人公・雄介がと一緒に女装することでまたトラブルに巻き込まれる姿が滑稽です。
明らかに男だろという感じの女装なのですが、周りも受け入れているゆるゆるな優しい?世界です(笑)。
雄介役の反橋さんが面白く、笑わせてくれます。ヒロインのお父さんにも驚かされます。
何も考えずに観れる映画です。
1年ほど前に某映画祭で拝見したことがあるのですが、久しぶりに観て、初めて観た時より面白い。時間が経つほど味が出てくる映画なのだと思いました。
【お茶をつぐ】
色々な意味で、上手く本当に自分のことを伝えられない、不器用な人たちの話だと思いました。
どんな人でも気持ちは上手く伝えられない。でも何かがきっかけで伝わった時(この映画の場合「お茶」)、例え伝えたかった人が亡くなった後でも、生きている人の世界は確実に変わる、受け継がれると思える素敵な映画だと思います。
また、個人的に画面展開というか、画面構成が3つの作品の中で1番好きだなと思える作品でした。
ろう者である、雷太が登場した後、聞こえないことで、他人の視線が恐怖であることが伝わったり、作品全体的なイメージが伝わる温かい配色、逆に、ネガティブなシーンでは薄暗く、光を上手く利用出来ている印象がありました。
特に、お茶の味比べ対決のシーンの太陽の光が綺麗で好きでした。
出演されている皆さんも温かいのだろうなと思える、全部が温かい作品で、お茶を「注ぐ」「継ぐ」が明確な、タイトル通りの映画でした。
【秋沢健太朗さんについて】
秋沢健太朗さんの3部作ということで、秋沢さんのことも追記させていただきます。
人の悲しみや怒りなど負の感情を表現するのがとても上手く、その瞬間がとても綺麗だと思える人です。
負の感情だけでなく、それらを乗り越えた先にある人への慈愛を表現されるのも上手いと思います。
「MISSING」では、憎い兄から電話が掛かってきた時、やめてほしいと懇願するシーン、兄を警官たちから引き離そうと必死に叫ぶシーンが光っていました。
「お茶をつぐ」では、ろう者役ということで、目と手話だけという制約がありましたが、手話に雷太のやりきれない感情が籠っていたのが伝わりましたし、貞二役の木村達成さんとの掴み合いの時や、お茶の缶をけたたましく叩いて怒りを表すシーンや、お茶対決後の涙のシーンが素敵でした。
「ミスりんご」では、上記2つの作品とは違った、やさぐれた青年役でしたが、そつなくこなされています。