「コンセプトは良いが、技量が拙い。(というか、業界が悪いのでは?)」忌怪島 きかいじま 映画野郎さんの映画レビュー(感想・評価)
コンセプトは良いが、技量が拙い。(というか、業界が悪いのでは?)
「村3部作の次は島ァ!?」
…とホラーファンを驚嘆させた(?)、清水崇監督の最新作である。
正直言って、コンセプトは悪くなかった。現実世界(此岸)/仮想空間(彼岸)の二軸でホラーを展開する…。異世界往還は古典的な手法だが、VRやメタバースといった新しいガジェットを持ち出すことでフレッシュな描写になっている。「パッと見」は良いのだが…まあいつもの清水映画である。
ダメポイントを列挙すると
①設定が浅い
VR・メタバースの取ってつけた感。小林泰三の小説のように「怪異をSF文法で再解釈する」試みがあるワケでもなく、結局いつもの土俗ホラーに落ち着いてしまう。
②陳腐な描写
設定が浅いのに伴ってか、幽霊さんもこれまたいつもの清水演出。寧ろこういう異世界往還ものは彼岸側(の怪異)を歪に描いてこそ、それが「幽明の壁を乗り越えて」来た瞬間に恐怖に変わるものなのだが。。『リング』ラストのショックを思い出してほしい。
③ぼんやり支離滅裂
「あれ?何でこういうことになるんだっけ?」と疑問符が残ること請け合いである。脚本が弱いのもあるが、(幽霊/霊能力の設定がふんわりしているせいで)唐突に見える展開が多く、更には無駄な時系列移動が難解さを加速する。なぜ清水映画はこうも観難いのか…。
結論としては、いつもの「生齧りしたけど新鮮味のない」ホラー映画である。クトゥルフ(っぽい)『稀人』、3Dブームに乗っかった『戦慄迷宮』『ラビットホラー』、お次は4D『雨女』、ダークファンタジー(っぽい)『樹海村』…。使い古されたJホラー文脈から、全く抜け出せていない。時間をかけて設定と脚本を練れば、それなりのものが出来そうなのだが…。
ただこれは、清水監督がダメという単純な話ではないと思う。監督は働きすぎなのだ。
『樹海村』パンフレットのプロダクションノートによれば、『犬鳴村』公開中に樹海製作が決まり僅か半年余りで完成に漕ぎつけたそうだ。
こんなクッソみてぇな地獄の突貫工事でまともな映画出来るかオォイ!?東映さん?清水監督は今年公開では忌怪島を監督、8月にはミンナのウタ監督、更に2本出演もしている。…過労具合がホラーだよ。
Jホラー組は、今や清水監督の独り勝ちである。辛うじて中田秀夫監督も踏ん張っているが、小中千昭/高橋洋/鶴田法男らは商業シーンから消えてしまった。なんつーか、もうちょい心あるホラー企画を大手配給さんには望みたいところなのだが…。