「二流アクション」バイオレンスアクション 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
二流アクション
ぷるるん天然娘特急便。
お願いしたら、ピンクヘアでショートボブの橋本環奈がやって来た。
ラッキ~!
…と思うのは大間違い。
お楽しみではなく、一巻の終わり…。
昼は簿記専門学校の学生。友達と同人誌読んでキャーキャー言ったり、平凡な女の子。
夜はバイト。バイトの内容は周囲には知られてはまずい。デリヘルではなく、
少女は殺し屋だった。
同名人気コミックを橋本環奈主演で実写映画化した所、大コケ&大不評…。
なのでハードル下げて見たので、Netflix配信という事もあって、まあ暇潰し程度には見れた。
そこそこ面白かった点もあるし、大不評の言われも分かる。
昼は専門学生、夜は殺し屋という二つの顔を持つヒロインの設定は面白い。
キャラの性格もクールとかキレてるとかイカれてるとかヘンに個性的ではなく、ゆるかわな普通の女の子。
そんな女の子が“お仕事”として、超絶な殺しの腕。
橋本環奈も格闘やガンなど体当たりのアクションを披露。
だけど聞く所によると、全部が全部橋本環奈自身がアクションしてる訳じゃなく、スタント立ててるとか。
そこに本気度を感じられなかった。
『ハンナ』のシアーシャ・ローナンや『キック・アス』のヒットガールことクロエ・グレース・モレッツは可愛い顔してハードなアクションをほぼ自らこなし、そこが良かったというのに…。
アクションをほぼノースタントでやるなら、実は身体能力に長ける土屋太鳳や『キングダム2』で大評判だった清野菜名でも良かった。
では、何故橋本環奈なのか…?
これはもう、客寄せにしか過ぎない。
原作コミックのキャラビジュアルもキュート。それを橋本環奈に演じさせる。
アクションは出来る範囲で。
後は橋本環奈のPV。一見アクションを売りにしてるようで、笑いやラブなどキュートさを売りにしてるのが分かる。
これで日本版ヒットガールを狙っていたのか…?
だとしたら、ヘソで茶を沸かせる。
別に橋本環奈の力量不足だけが原因ではない。彼女は自分の“仕事”はきちんとこなしている。
主犯は作り手側。
監督は演出や映像や編集や音楽などにスタイリッシュなセンスを出したのだろうが、寧ろセンスの無さをさらけ出してしまっている。スローモーションや細かいカットは何かの真似事のよう。最たるは、カットとカットの合間の意味不明な繋ぎは何なの…?
CG処理で超人並みに残像残す俊敏な動きはやり過ぎ。
大まかな話は、ヤクザの内部抗争に巻き込まれるというもの。これ、定番ネタとは言えやりようによっては面白く出来たものの、無駄な要素が疎かにしている。
コントのような笑い。ナイナイ岡村と鈴鹿央士のやり取りなんてダダスベり。
ラブは必ずしも必要だったのかな…? それがキャラに魅力や人間味を与えているとは言え、「仕事ですから」と言ってる割りに私情を挟んで、プロとしてどうのこうの以前に、言ってる事と矛盾してるような…?
作り手側は本気でこのコミックを実写映画化しようという気があったのか…?
橋本環奈のキュートさを活かせる企画を探してて、キュートな女の子が殺し屋だからこれはいいと思って、でもアクションだけじゃ客は入らないから、笑いやラブを盛り込んで、橋本環奈のPVにしよう!…と思ったのではないか。
これはもう、作り手側が殺されるべきの愚考である。
他強いて良かった点を挙げるなら、助演陣。
組長役に佐藤二朗。いきなりオヤジギャグをかまし、嗚呼またこれやっちまった…と思いきや、なかなかの凄みを見せた。本当に『さがす』で役幅広がった。彼の使い方を分かってないのは福田だけ。
インテリ若頭の高橋克典。ニヒルで狡猾な雰囲気が、何故か大杉漣に見えた。
ひょっとしたらキャストのVIPは、城田優かもしれない。独自の3アウトルールや何かしら鼻歌を歌い、デカイ態度のキャラ設定もさることながら、最強の殺し屋の名に相応しいそのブッ飛んだ強さ。人を軽々と放り投げ、壁をぶち壊し、ナイフや銃でも倒れず、不味いラーメンも旨そうに食う、その巨体としつこさはターミネーター級!
この一癖も二癖もあるヤクザや殺し屋の内部抗争を過剰なバイオレンスやブラックユーモアでやったらもっと面白かったろうけど…、それだったら原作の意味が無いか。
にしても、誰得の作品だったのか…?
“バイオレンスアクション”なんてよく言えたもんだ。
“二流アクション”だ。