「神とは?」ザ・ホエール 映画イノッチさんの映画レビュー(感想・評価)
神とは?
偽宣教師としてやってきた彼、原作ではニューライフではなくモルモン教だとのことですが、宗教の果たす役割や必然性も考えさせられる作品でした。
世界で一般的に言うところの宗教は、日本人には馴染みのないものなので、ストンと理解はできないですが、もし正しい宗教があるとしても、それを信じ広める人の言動、捉え方、欲望や時代に依って、いくらでも変貌していくものなのでしょうね。
過ちや嘘だらけの人生。残酷で不確かなものだらけの世の中です。だからこそ「絶対だ」と確信できる神仏を信じ、すがるのでしょうか。
自分自身の人生を振り返ってみると、主人公と同じように「人生でたった一つだけ正しいことをした」と言えるものを心の何処かで欲している気がします。それによって安心したい、穏やかになりたい、安らかに死んでいきたいと……。
これが脚本家の体験を元にした作品だと知った時は、驚きとともに妙に納得した部分もあります。脚本家は、主人公と違って過食症を乗り越えたと知って安心しました。
宣教師が神に導かれてやってきたのと同様、ブレンダン・フレイザーが主役として抜擢されたのも、神に導かれたのかも知れません。主役を誰にするか悩みに悩んだそうですし、彼がこの役のおかげで役者として復活できたそうですしね。
色んな意味でこれがアカデミー賞を取ったのは良かったです。取れるだけの素晴らしい演技でもありました。4時間もかけての特殊メイクや重たい肥満スーツの着用だけでも大変ですが、あのまま歩き、シャワーを浴び、物を拾い、演技する。想像を絶します。ぎっくり腰になって観た作品なので余計にその辛さが伝わってきました。
同じ監督の作品「レスラー」も是非観たくなりました。