「魂の救済」ザ・ホエール REXさんの映画レビュー(感想・評価)
魂の救済
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終映後、久しぶりに拍手がおきました。
最後、力を振り絞り、立ち上がり、娘のもとに向かおうとする姿は、銛でつかれようとも生きようとする白鯨に重なり、それは生きながら死に向かっていること、生きている苦しみそのものを体現しているようでした。
最初は映画サイトのあらすじと若干違うことと(娘に会いには行かないこと)、入れ替わり立ち替わり様々な人物が突然登場することで入り込みづらかった部分もありました。
しかし、あ、そういえばこれはアロノフスキー監督作だったと気がついてからは、その“型”にすっと入り込むことができました。
要するに「ノア」しかり、「ブラック・スワン」しかり密室劇なんだな、と。
家族という血縁関係の複雑なパワーバランス、それを描かせたらピカイチの監督。
しかし今回は「目的」や「使命」ではなく、「救済」をテーマにしています。
登場人物は、だれも悪くない。
ただ自分の心に忠実であるがゆえに、か家族を傷つけてしまう。
それは、よくあることなのこもしれませんが、この作品は更に、愛し愛される関係の者でさえも救うことのできない絶望に一歩踏み込んでいます。
人の心は自分自身でしか救えないのかもしれませんが、最終的に赦しをえることで、救われることも事実。赦しは、与える側をも救うのかもしれません。そんなラストを、私も祈る気持ちで見つめていました。しばらくは、涙が止まりませんでした。
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