「ブレンダン・フレイザーの声の良さ。」ザ・ホエール 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ブレンダン・フレイザーの声の良さ。
ブレンダン・フレイザーが、人を惹きつけると同時に安心もさせてくれる、素晴らしい声の持ち主であることを忘れていた。全員を特殊メイクのファットスーツで覆われていても、あの声だけで、この主人公がただ憐れむべき存在ではなく、魅力も知性も備えた人物であることが伝わってくる。大げさに聞こえるかも知れないが、フレイザーが発する主人公の声を聞いた瞬間から、このキャラクターを本質的に信用していい気になった。
正直、たまに脇役を演じている姿を見かけるだけだった近年は、ブレンダン・フレイザーが真価を発揮できていたとは思えなかった。しかし本作では、堂々たる主演スターとして演技力も天賦の才能も存分に発揮している。しかも、相棒役であるホン・チャウの演技も素晴らしくで、社会とは切り離されたところで繋がっている二人の絆が感じられる。
監督の演出力を過小評価するつもりではないが、これはダーレン・アロノフスキーの、というよりも、ブレンダン・フレイザーとホン・チャウの映画だ。そして俳優が屋台骨を支える映画も、作家主義で評価される作品と同じ比重で評価されてしかるべきだと改めて思った。
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