劇場公開日 2023年4月7日

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「ラストは涙が溢れる。傑作だ。登場人物がほぼ四人だけの室内劇だが、人間を、社会的生き物としての人間を見事に活写している。」ザ・ホエール もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ラストは涙が溢れる。傑作だ。登場人物がほぼ四人だけの室内劇だが、人間を、社会的生き物としての人間を見事に活写している。

2023年4月10日
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鑑賞方法:映画館

①基が舞台劇だから仕方がないが、どうしても舞台臭が抜けないので⭐だけ減点。
②ダーレン・アロノフスキーは今回は『ブラック・スワン』ほど神経症的ではないが、ほぼ4人(+1人)の登場人物のみ会話劇を緊密な演出で構築している。
しかし、『レスラー』といい『ブラック・スワン』といい、どうしようもなく破滅に向かう人間を絶妙に演出できる監督さんだ。未見だけれども『レクイエム・フォー・ドリーム』もそういう映画なんでしょうね。
③今年のアカデミー賞主演男優賞は『イニシェリン島の精霊』のコリン・ファレルだと思っていたけれども、本作のブレンドン・フレイザーもそれに負けない熱演。
④故淀川長治先生は「秀れた映画とは“人間”を描いている映画」と書かれている。
人間のどうしようもなさ、ということがこれでもか、と突き付けられる。
主人公のチャーリーはパートナーのアランに死なれた傷心から過食症・自閉症を発症しまう超肥満体となった男。
上が284という超高血圧なのにチキンコンボやピザ、チョコレートバーといった高カロリー・高脂質の摂取を止められない。頑なに病院に行くことを拒んでいる。
口と指と油でギタギタにさせながらフライドチキンを貪るように食べる姿は、私の様な健康オタクからすれば病的で気色ワルい。
チャーリーがそうなった訳は、パートナー(男性)の死なれたことから過食症になり緩やかな自殺に他ならない事がやがて分かってくる。
ゲイのパートナーに死なれて自殺を考える(希死念慮に取り憑かれる)というと、コリン・ファースの『シングルマン』を想起させるが、スタイリッシュで美しい映像美が印象的だった『シングルマン』に比べると正直醜悪で見苦しいと初めは思ってしまう。
⑤文章に対して鋭い見識眼を持ち、作文の講師が出来る程の知性を持っているのだら、過食症も自閉症も脳の疾患だとわかるだろうし、対処策もわかるだろうに(策さえ分かれば対処出来るという程単純なものではないが)、このままでは命が無くなることを分かりながら暴飲暴食を止めようとしない。人間とは真に不条理な存在である。(私は双極性Ⅱ型障害を発症したが希死念慮は起きなかったので希死念慮については偉そうに云う資格はないけれども)
⑥リズという面倒を見てくれる看護師の友達がいるが、チャーリーの状態が分かっているのだから、何故無理にでも救急車を呼ばないのか、アメリカではそれほど個人の意志が優先/尊重されるのか、と思ったけれども、やがてリズはチャーリーの恋人の妹であること、兄の死の真相を知っていること、チャーリーか何故過食症になったのかを理解している人間であることが分かってくる。
⑦そして、ここに信仰&神の問題が絡んでくる。
この映画では「ニューライフ」という「エホバの証人」?みたいなキリスト教系の宗教団体が出てくる。
アランが死んだのも、子供の頃から刷り込まれた教えに反し、また所属していたコミュニティから追放されたトラウマから結局逃れられず自死したようなものだし、トーマスにしたら

もーさん
2023年4月12日

共感ありがとうございました☆

美紅