劇場公開日 2023年4月7日

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「人は他の人を気にせずにはいられない生き物だ、だから人間は素晴らしい」ザ・ホエール とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人は他の人を気にせずにはいられない生き物だ、だから人間は素晴らしい

2023年4月8日
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「白鯨」モビー・ディックと自身を重ねる悲痛なエッセイに胸が痛い…。大きく(醜く?)、無感情と作中でも形容されている鯨に。作者は自身の悲しみを先延ばしにしている。愛したパートナーとの過去を機に過食状態に陥り健康状態を著しく崩している肥満男性が自らの死期が近いことを悟ったことから、自身を嫌っている娘との関係修復に向けて行動する5日間を描いた本作は、アロノフスキーによる実にアロノフスキーらしいダークで壮絶な作品。つまり、息もできないほど内側へと掘り下げ追い込む究極のキャラクタースタディ。作中でキリスト教、引いては宗教それ自体の存在自体に疑問符を投げかけるような揚げ足取りなど、神の不在あるいは沈黙。
だけど、最後には微かに救いもあって、それらは何より主演ブレンダン・フレイザーの魂の宿った名演と共に見る者の心を広く掴み記憶されるだろう…。別にオスカー獲らずとも既にソダーバーグやスコセッシなど素晴らしい監督たちの作品にも次々と出て復活は間違いなかったけど、やっぱり彼が主演男優賞を獲って本当に良かった。"カムバック好きカムバック好き"と言いながらなんだかんだ、同監督の本作と共通する『レスラー』のミッキー・ロークや、『バードマン』のマイケル・キートン、『クリード』のスタローンなど獲り逃し続けているイメージのほうが近年圧倒的に強かったから。

disgusting
勝手に関連作品『レスラー』

とぽとぽ