「神の不在の中にある、神の存在」ザ・ホエール h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
神の不在の中にある、神の存在
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チャーリーのパートナーのアランはニューライフ教会に「殺され」、もちろんアランの妹リズも教会を憎んでいる。娘のエリーは父チャーリーに捨てられ、母親、学校からも疎外され孤立している。ときおりチャーリーのアパートに来るトーマスは当初ニューライフ教会の宣教師を名乗っていたが、実際は父親と教会から自ら離れた「逃亡者」だった。このように、ほぼ全員がいまは信仰を持たない「棄教者」だ。
しかし、緩慢な「死」を自ら迎えようとしているチャーリーは、娘エリーや元妻メアリー、「義妹」リズ、トーマスたちとの交流の場で彼らの生を救済し、同時に自らも救済されるプロセスに、キリスト教の信仰を想起せずにはいられない。それぞれが恋愛、食、カネ、キャリア、酒、ドラッグなど俗物に依存する生き方をさらけ出しながら、死を迎えようとしているチャーリーの導きから彼らは赦され、そして隣人愛に収斂していく、極めて宗教的な作品だ。
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