「ブレンダン・フレイザーの渾身の演技に圧倒される!」ザ・ホエール 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
ブレンダン・フレイザーの渾身の演技に圧倒される!
重度の肥満症となった主人公が部屋のソファにほとんど座っているような異色の室内劇の映画化に挑戦し、緊迫感みなぎるヒューマンドラマに仕上げたアロノフスキー監督の鬼才ぶりに改めて感嘆します。愛するものと疎遠となり、死を意識するほど精神的に追い詰められた人間の心の軌跡を描かせたらこの監督の右に出る者はいないのではないでしょうか。観客は主人公の部屋の中にいるような錯覚に陥るほど息づかいを感じ、登場人物たちの内面世界に連れて行かれます。
そして、毎日メイキャップに4時間を費やし、45キロのファットスーツを着用して40日間の撮影に挑んだフレイザーの渾身の演技に圧倒されます。観客は冒頭からその肥満体型に度肝を抜かれるでしょうが、いつの間にかフレイザー演じるチャーリーの深い悲しみと愛、その人間性に心を震わせられるに違いありません。第95回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたホン・チャウが演じる、チャーリーを支える看護師リズが、ふざけて体をくすぐった時に見せるチャーリーの愛嬌のある笑顔が、この作品の雰囲気を一変させるのです。
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