「色々と切ないことの連鎖」ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ ニコラスさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と切ないことの連鎖
まず、140年ほど前には猫は人間にとってネズミを捕るだけの同居人(猫)だったのか!と軽い衝撃を受けた。古代エジプトでは神の使いと崇められていたらしいから、もう少しステージの高いところに位置しているかと思っていたのに。
そしてカンバーバッチ演じるルイス、この時代はやはり男が一族を支えなければならなかったのですね、立ち居振舞いからは周囲となかなか協調することが難しい人物の様子が伺え、背負うものがない自由な立場であれば、もっとノビノビ才能を発揮できたのかもしれません。
それでも理解者であるエミリーを伴侶とすることができたことはひとときの幸せだったのでしょう。
ただ、それも一因なのか、妹たちは生涯独身、一族は恵まれたとは言えない暮らしぶり、そしてルイス自身もどんどんと落ちていく。
カンバーバッチの演技は見事でした!若かりし頃の一点集中したときの背筋をピンと伸ばしステップを踏むような軽い足取りから、妻を亡くしてからの深い悲しみ、そしてアメリカへ渡ってからの狂気を孕んだ眼差しと早口で畳みかけるスピーチ、そこから最晩年に向かって再び穏やかな表情へと変貌するさまを見事に表現してくれました。
誰かがルイスに、そして一族に手を差し伸べることができていたなら、幸福で明るくカラフルな画風のままで恵まれた人生を送れたのだろうかと、少し切なくなるお話でした。
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