劇場公開日 2022年11月3日

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「赤を効果的に用いた映像設計、女性の人生の一端を垣間見せる物語構成など、約30分間に近年のアルモドバル作品の要素を詰め込んだ感のある一作」ヒューマン・ボイス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0赤を効果的に用いた映像設計、女性の人生の一端を垣間見せる物語構成など、約30分間に近年のアルモドバル作品の要素を詰め込んだ感のある一作

2025年4月3日
PCから投稿

ティルダ・スウィントンのほぼ一人舞台といってもよい本作は、ジャン・コクトーの戯曲を原案としているだけに、演劇的な要素が非常に強い作品でもあります。

本作同様一人の女性を追った同監督の作品として『オール・アバウト・マイ・マザー』(1998)がありますが、何人かの人物が交錯する『オール・アバウト・~』とは一見作劇的には対照的であるかのように見えます。

しかし両作を見比べてみると、本作は明らかに『オール・アバウト・~』と関連している、あるいは『オール・アバウト・~』のその先を描こうとしている、という節があります。特に結末に至るまでの主人公の選択とその後の運命はかなり対照的なので、本作を面白く鑑賞した人はぜひとも『オール・アバウト・~』もご覧いただきたいところ!

本作のタイトルは一見ポップアートのような軽さがありますが、字体を構成している一つひとつの工具などは本作で重要な役割を担っているものばかりだし、それらがどう扱われるのかを知った後だと、このタイトルアートは意外なほどに重みがあることが分かります。

「ボイス」が題名に含まれているのに、ものすごく肝心の音声は観客には届かないというところも面白いです!

yui