劇場公開日 2022年5月20日

  • 予告編を見る

「歌と結束が彼女たちにもたらしたもの」シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5歌と結束が彼女たちにもたらしたもの

2022年5月28日
PCから投稿

かつて「フル・モンティ」で最高のおかしさの中に悲しみや喜びを巧みに散りばめたピーター・カッタネオ監督らしいハートフルな一作だ。本作はまず英軍基地内に暮らす”妻たち”のかなり特殊な日常を丁寧に描きつつ、その上で「なぜ歌うのか?」という、ここに始まりここに行き着く最大の命題を浮き彫りにしていく。初めは乗り気でなかった部員たちも、言葉ではなく歌詞とメロディーに身を委ねることで、少しずつ自分を表現する術に知り、生き生きと輝き始める。中でも性格の全く異なる主演女優二人の牽引ぶりが素晴らしく、お互いの資質や才能に嫉妬を感じて常に反発し合いながらも、心のどこかで信頼しあっている様子が伝わってくる。彼女たちは決してパートナーの帰りを待ち続けるだけの存在ではない。家族や仲間を思いながら、何よりもまず自分のために胸中をヴィヴィッドに歌う。その意味では、個を解き放つというテーマを内包した普遍的な映画なのである。

コメントする
牛津厚信