劇場公開日 2022年5月20日

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「ケイトのキャラ設定に難ありだが、合唱の楽しさや魅力は〇」シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ケイトのキャラ設定に難ありだが、合唱の楽しさや魅力は〇

2022年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

9.11後の対テロ戦争の一環であるアフガニスタンでの戦いに、米国から引っ張り込まれた格好で参戦した英国軍。泥沼化する戦地に派兵された夫の身を案じる妻たちが、互いを支え合うことを主眼に2010年に合唱団を結成して活動したという実話に基づくヒューマンドラマだ(原題は「Military Wives」)。

ストーリーはおおむね実際に起きた出来事に沿って構成されている。たとえば後半で合唱団のメンバーたちが協力してオリジナル曲を作るエピソードも、実在の“軍人の妻”合唱団のメンバーたちの手紙から「Where You Are」という曲が作られたことに基づいており、YouTubeで彼女たちのパフォーマンスを視聴できる。

映画の一応の主人公は、戦地で一人息子を失ったケイト(クリスティン・スコット・トーマス)なのだが、彼女のキャラクター設定がいまいちで、なかなか感情移入しづらい。喪失感を紛らわせようと明るく振る舞うのはわかるが、やたらと仕切りたがったり、あるトラブルに腹を立てて仲間に性的な暴言を吐いたりと、何もそんなに極端なキャラにしなくても……と感じてしまう。実際には、カリスマ指揮者として知られるギャレス・マローン(Wikipediaにも項目がある)が軍人の妻合唱団をサポートしたそうで、つまりケイトのキャラ自体は完全な創作ということ。それならなおさら、もう少し魅力的な人物にしてもよかったのにと思う。

とはいえ、映画をいろどる合唱曲の数々は、シンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」、ティアーズ・フォー・フィアーズ「シャウト」、ダイドの「サンキュー」、ヒューマン・リーグ「ドント・ユー・ウォント・ミー(愛の残り火)などなど、洋楽好きなら聞き覚えのあるヒット曲が目白押し。合唱アレンジによってオリジナルとは一味違う魅力を引き出すことに成功しており、パートを分けて合唱することの楽しさも伝えている点は評価したい。

高森 郁哉