「展開そのものは予想を大きく超えるものではなくとも、決して目を離せない一作」ビリーバーズ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
展開そのものは予想を大きく超えるものではなくとも、決して目を離せない一作
山本直樹の原作を未読のまま鑑賞した観客による感想です。主要な登場人物はわずか三人、隔絶した無人島の、さらに居住区や海岸など、限られた箇所が舞台という、要素を切り詰めまくった設定となっています。
冒頭、それぞれの足の裏を合わせて、三角形を形作る、という独自の瞑想に励む三人の姿が映し出されます。彼らの生活は、互いへの敬意と宗教的な情熱に裏打ちされて、一見すると完璧な調和が取れた生活を送っているように見えます。ところが「本部」からの食料が届かなかったり、自らの内にある不浄をそぎ落とすという名目の修行が上手くいかない、など、この調和が取れた世界は開幕時点で既に綻びが生じていることが示されます。
より浄化された自分になるため、としつつ、実際は諸々の欲望を抑え込んでいるだけの修行生活がどのような結末を辿るか、同じ原作者の『レッド』とか、洋邦問わず過激な宗教団体が引き起こした凄惨な事件などからおおよそ想像が付いてしまうのですが、城定監督の会話劇と肉欲、残虐描写の配分は絶妙で、展開そのものにそこまで意外性を感じなかったとしても、中だるみ思わせる隙はほぼ見出せませんでした(むしろ最終版の楽器の使い方など、全く想定できないだけに衝撃的…)。
しかし色々な意味で、俳優表情の付け方も音の使い方も名人芸に達している城定監督の冴えた演出が光る本作を、R15+でも公開して良いんだろうか…。
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