「歌に尽きる」カラーパープル 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
歌に尽きる
「スピルバーグの傑作のリメイク」と“ミュージカル”という宣伝のボンヤリとした記憶で、好きなミュージカル作品が少なくない俺は観賞を決めた。
(スピルバーグが自らリメイクしたのかと勝手に思い込んでたが、そうではなかったけど)
【物語】
舞台は1900年代前半から後半にかけてのアメリカ。
セリー(ファンテイジア・バリーノ)とネティー(ハリー・ベイリー)は仲の良い姉妹。 父親の営む店を手伝っていたが、セリーは売られるような形で父親の決めた相手乱暴者“ミスター”(コールマン・ドミンゴ)の後妻として強制的に結婚させられる。夫からは家政婦同然の扱いを受け、こき使われる毎日だった。 ある日父親から逃げて来た妹に対しても、一旦は受け容れるもののいいなりにならないという理由から「2度と近づくな。近づいたら殺す」と引き離されてします。
愛の無い不遇な日々を送るセリーだったが、それでも明るさを失わなかった。あるとき人気歌手シュグ(タラジ・P・ヘンソン)の身の回りの世話をすることになり、二人は次第に絆を深めていく。 やがてシュグはセリーの人生に転機をもたらす。
【感想】
まず、凄く意外だったことは、これまで観て来た戦前戦後の黒人主人公の映画は例外なく“白人による差別”が大きなポイントになっていたが、この作品はそれがない。「白人に差別されない」ということではなく、白人が登場しない。
黒人だけの街、という感じなのだが、この時代アメリカにそういう街も実際にあったのだろか?
白人による差別が無い代わりにあるのは、女性差別である。白人に虐げられる黒人家族という構図だと、黒人家族はいたわり合う気持ちが生まれるのだと思うが、黒人の夫が黒人の妻を奴隷のように扱うのは初めて見た。
こういうのを見ると、つい100年前まで女性は国・種族を問わずに弱い立場に有ったこと、この100年で劇的にその立場が改善されたことを感じる。
話題のドラマ‟不適切にもほどがある”ではないが、昭和を知らない世代ではこの女性の扱いは信じられない世界ではないだろうか。
本作で設定・ストーリー的に強く印象に残ったのは以上の2点だった。
感動したり、涙を流すことは無かった。
ただ、ウリの歌は良かった。
特に主人公よりも人気歌手シュグ役のタラジ・P・ヘンソンの歌が素晴らしかった。
本作は良くも悪くも歌に尽きる。
そう思って観れば楽しめるかと。