「オリジナルをぜひ」カラーパープル Lhowonさんの映画レビュー(感想・評価)
オリジナルをぜひ
スピルバーグ監督のオリジナル カラーパープルが好きです。何なら、スピルバーグ作品で一番かも知れません。
映画を見た後にTower Recordに直行し、クインシージョーンズのサントラを購入。すり切れるほど聞きました(CDだけど。)。米国の黒人音楽に細かい分野があることを知ったのです。最後の方にはコールマン・ホーキンスのボディーアンドソウル(1939年)が流れて、モダン(!)ジャズに繋がっていくわけです。
本作は、ミュージカルがベースのため、ミュージカル風の歌曲が途中に挿入されます。ポーギーとベスの様には行かず、モダンな曲であるため、画面と時代にズレが生じてしまいます。
同様に、皆けっこうきれいな服をきているし、家も大きいしそれなりにきれいなリネンを使っている。飢えてるわけでも無さそうだし、バーで音楽を楽しむ余裕があります。
オリジナルは、汗や家の中の埃っぽい臭いを感じました。本作では、フード理論的には、食事は出てくるのに、ちゃんと食事を摂っているシーンはなく、小道具としての食事でしかありません。匂いがしないのは、バービーランドやドント・ウォーリー・ダーリンのビクトリーの町の様ですは。
カラーパープルで大事なのは、姉妹の絆・シャグとの友情(今回はシュグ?)です。姉妹のシーンとして『おちゃらか』がありますが、最初と最後にちょろっと出てくるだけです。オリジナルではメイン・タイトルのリコーダーによるメロディーとして大事に扱われています。Miss Celie's Bluesは出てきますが、初め高飛車だったシャグとセリー友情を気付く過程が簡単に済まされています。
1985年当時、もちろんインターネットはないので、こういった人種問題+女性問題の作品を初めて見て驚きました。セリーは都会的な独立心を持つセリーにあこがれを抱いていきますが、今回はシュグやソフィアは単に『男勝り』で暴力的なだけに見えてしまいます。
このようにカラーパープルはセリーの人間的な成長を見せることにより、社会も成長する必要があることを表していたと思います。本作は、神様が最後は助けてくれる、それまでは我慢しろ、という解決になっています。原作は読んでいませんし、監督の宗教観も知りませんが、スピルバーグがユダヤ人であることと関係あるかも知れません(ゴスペルも出てくるけどね)。
オリジナルを見たことがないと、本作は映像はシャープだし、歌もダンスもよいので好評価になるかも知れません。『イン・ザ・ハイツ』は良く思ったのに、平凡は評価をつけたのは、スピルバーグ版を見ているからです。オスカーとるための映画と批判されましたが、彼は今でも撮りたい映画と撮るべき映画を順番につくり続けていると思います。
ここまで読んでくれた方、クインシージョーンズのサントラをまず聞くことをお勧めします。