「ユートピアだと思ってた」ドント・ウォーリー・ダーリン ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
ユートピアだと思ってた
本作に出てくる1950年代のアメリカって、凄く勢いがありそうな国ですね。国家も企業も国民も一丸となって、ひたすら消費を重ねることをユートピアとしてそうです。俺達は凄えぞお。
だけど、1950年代に夢見たユートピアの先にあったのは、2020年代のディストピア。そんな2020年代のディストピアに住むジャックが、妻を1950年代ユートピア風の仮装空間へ送りこんでいたというトンデモなオチでした。
この1950年代ユートピア風仮想空間は、見事なまでにホモソーシャルな世界。そんなホモソな世界で一番大切なものは、妻でも家族でもなく利害関係のある男性同士の絆です。なかなか大変そう。
このユートピアで、アリスにはしばしば異変が起きますが、原因が何か分かりません。強い愛で結ばれていると思っていたジャックとの関係もなんだかおかしい。ジャックは現実でも仮想空間でもアリスを都合良く利用しているだけなのではないかな?
トンデモ男とトンデモな世界で、アリスはとうとう発狂してしまいました。ホモソな世界では、自分が感じたことを言おうものなら、被害妄想の酷いメンヘラ女として袋叩きにあいます。
あれ、このアリスって、実は私のことかもしれない。
舞台設定はリアルじゃないのに、男女の関係性だけは妙にリアル。しかも、アリスは闘い変化するのに、ジャックは過去とホモソにしがみついて変化できません。
仮想空間にすることにより、社会的な抑圧と社会通念がよりリアルに感じました。でもこの仮想空間って、一体誰が作ったの?
同感です!お金じゃなくて居心地いいんでしょうね、皆が「先生」「社長」「先輩」扱いしてくれるから。他にしたいことあるし、十分やった感あるし、飽きてきたし、もう去るね~と言って去って欲しい高齢男性ほど、まだ居る・・・
経済的自立がまず一番!が若い時からの目標でした。十分働いた!まだ声かけてくれる場合は、若くて優秀な人を優先してくれ、それでたまたま居なかったら引き受けます、としてます。ストレスから解放されて時間もできたから遊びたいし!何歳になってもずーーっと居る政治家や社長は殆ど男性ですね。世代交代や新陳代謝の意味がわかってないんですね。余人をもって代え難い人なんて居ないです、人間だって生き物なんだから。
「ホモソーシャル」世界って、一見お洒落でパーティー三昧で素敵💕と女に思わせるのが、すごく嫌です。仕事しなくていいんだよー、ドレスをプレゼントするよー、でかい家にプールもあるよ~!いらねえよ、そんなの!仕事していた頃の自分と自由を取り戻したいと思って逃げたアリスは私でもあるしいままでの沢山の女性だと思います。
この仮想空間は、現代の男の憧れと夢と欲望とマッチョ気質が作ったものでしょう。
本作は女性監督による皮肉がきいた快作でした。
しかし、1950年代のアメリカって、ホント保守にとってはタイムスリップしてでも戻りたいアメリカの栄光の時代なんでしょうね。
トランプによって最高裁による中絶禁止など、確かにだいぶ過去に逆行させられましたが、今回の中間選挙の結果には溜飲が下がりました。