「とてつもないラブストーリー」ドント・ウォーリー・ダーリン U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
とてつもないラブストーリー
毒舌と皮肉に満ち満ちてはいるが。
愛こそ全てをこんなカタチで見た事がない。
男性諸氏の誤解と欺瞞を直視させられはするが、可能な限り優しさをもって諭されてるような気にもなる。
作品的にはかなりな違和感をもって進んでいく。
色使いも落ち着かないし、乱痴気騒ぎからの幕開けだし。なんだこの上っ面な世界は、って感じだ。
結局の所、精神世界の話で現実とは違う空間で物語は進む。現実では寝たきりで目に妙な装置をつけられてる。
気が利いているのは、コレは男性主導の元、作られた世界であるという事。…ラスト近くに裏で糸をひく女性の存在も出てきたりするが。
つまり…
のっけから落ち着かねぇなと嫌悪感を抱きながら見てたものは、男性主観の世界なのだ。しかも、女性の事も考えて作られた世界なのである。
見せられる日常も、男性が与えたであろう価値観を基盤に進んでいるように思えたりする。
この時点で、女性は男性からの価値観を押し付けられ、労働を余儀なくされてはいるのだけれど、ソレが幸せだと刷り込まれている状態にも見えてくる。
てっきり俺は、男性上位社会が女性に強制してきたアレやコレやを強烈に叱られるのかと思ってた。
60年代を再現したのは、男性が最も調子に乗ってた時代なのかもしれない。
その異常な世界に気づく主人公。
正常な思考を取り戻す過程は、この世界では被害妄想に囚われていくように映る。
男性は完璧な世界だと強調し、彼女を引き留めようと懇願する。
ここで彼女は揺れる。
「ああ、それでも愛してる。愛してるの。」
この異常な世界に閉じ込められているにも関わらず、彼に対する愛情は揺るがないようだ。
「何もいらないから、一緒に逃げよう」と女性は訴える。
この世界を捨てた先の現実は散々なもので…男性は無職で生活は彼女に依存してる。彼女は医師でかなりなハードワークをこなし、仕事にも生活にも疲れているように見える。
現実世界への認識はこの時点では無いようにもおもうのだけど、彼女はこの完璧な世界から脱出する。
与えられ見せられる夢を拒絶する。
おそらくならば目覚めて終幕。
そしてタイトルコール「心配しないでダーリン」
ご丁寧な事に、2回も念を押される。
「心配しないで、ダーリン!」
…男性の恋愛観がいかに稚拙で即物的であったのか思い知らされる。彼の焦りも愛情表現も痛い程分かるのだ。
女性を幸せにするにあたり、金を稼いで、いい車に乗って、素敵なドレスで着飾って、マイホームがあり、妻は家事に従事し、情熱的なSEXをして、美味いメシとワインが並ぶ食卓。
そんなものでしか愛情を証明する術をもたない。
その全てが揃っているのが、この世界であり、理想ではないのか、と。
だが、女性はその理想を拒絶し、彼だけを選ぶ。
それが「一緒に逃げよう」って台詞だ。
まいりました。
女性の底知れぬ母性に白旗です。
おそらくならば
「そんなもの無くても、ちゃんと愛してるから、心配しないでダーリン」ってのが本題なのだろう。
逆説的ではあるが、この解釈に至りラブストーリーだと定義した。
もう…手のひらで転ばされてるような感覚しかないwとんでもなく大きく豊かなモノで包まれてる。
それに比べて男性側のなんと矮小で浅薄なものかと反省する。そして「my」が付かない所をみると、全ての男性に当てはまるメッセージなのであろう。
作品的には☆3.5だけど、コンセプトとかセンスならば☆50くらいつけてもいい。
だって2回も念を押されるんだよ?
「心配しないでダーリン!嘘じゃないよ?」って言われたような気がして吹き出したw