「年のせいか、こんな制度があってもいいかな、と思えてくる。」PLAN 75 chappieさんの映画レビュー(感想・評価)
年のせいか、こんな制度があってもいいかな、と思えてくる。
とてもリアルだった。
他の方のレビューには、「死を選べる制度」が日本に成立するリアリティがないとの感想もいくつも書かれていた。
その通りだ。こんな法案が、どういう経緯で誰が言い出して、世論の支持を得て、国会で成立してしまうのか。まったくイメージできないし、この映画を見ても分からなかった。
それでも、リアルだった。この映画で描かれている、法案「PLAN 75」が成立したあとの日本は、いまの日本と何も変わらない。昔ほどの勢いはないけれど、世の中は比較的穏健で、礼儀正しく、親切な人たちのたくさんいる場所だった。
年をとるにつれ、仲のよかった友だちも亡くなったりする。幸い自分はひどい病気もなく、働けている。パートアルバイトなら年齢制限なども特にないし、そこそこ求人もある。住むための物件もたくさんある。それでも、いちど仕事を失うと、採用してくれるところが見つかるまで時間がかかるようになった。年配者に肉体労働をさせる職場は、お年寄りにやさしくないイメージに見えてしまうのだね。確かに、お年寄りに部屋掃除させてる一流ホテルなんてないですよね。
もう少し安い部屋に引っ越そうと思う。不動産屋さんに部屋はたくさんあるようなのだけれど、なかなか決まらない。年寄りには、なるべく貸したくないのだね。ある日突然死なれたら、あとの借り手がみつかりにくくなる。それもわかる。
娘も孫たちも、お金持ちではないけれど元気にやっている。電話すれば声も聞けるし、いっしょに暮らせたらいいなと言えば、きっと迎えてくれる。でも私は一人で暮らせてるし、そんなことお願いするのは気が進まない。私はいまのところ大丈夫だ。
「PLAN75」という仕組み、批判している若い人たちもいるけれど、そんなに悪い制度ではないのでは?とふと思ったりする。もう十分働いたし、無理に働かなくても良いのではとも思う。楽しい日々もそれなりにあった。私といて楽しいと思ってくれる人もいなくなっちゃったし。最後に美味しいもの食べて、そのまま静かに眠れたらいいんじゃないかな。そのまま目が覚めなくても。社会保障も若い人たちの重荷になっているのですよね。
倍賞千恵子さん演じる主人公の心の動きは、とても自然で、とてもよく分かる。
あと10年ちょっとで、私もその年齢になる。「PLAN75」、やっぱり気になる。1年前にこの映画を観たときのメモを見ながら書いているけれど、感想は変わらない。その日まで、1年短くなっただけ。選ぶのは私だから。選ばないのも私だけれど。
長々とした年寄りの感想文を、最後まで読んでくれてありがとう。