劇場公開日 2022年6月17日

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「やるならとことん、年寄りに食わす米は勿体ない!と叫べ」PLAN 75 とびこがれさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0やるならとことん、年寄りに食わす米は勿体ない!と叫べ

2022年10月16日
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鑑賞方法:映画館

知的

 生産性のない高齢者が日本の財政を圧迫している。とにかく年寄りに死んでもらって頭数が減れば、払わずに済む年金は浮くし、介護従事者は他の生産的な仕事に就けるし、親の介護で介護離職を余儀なくされる人も減る。もちろん医療費も減ると。
 そんな発想をしたことがないとは言えないです。社会が発展して競争力が高く、豊かな国になるために使うべきリソースを、死にゆく既に意識のない寝たきり老人に流し込む栄養剤に使っていては勿体ないと。
 この映画は当然、その種の発想を否定するための映画です。
 まず始めに冒頭で、老人施設で大量殺人をした男が震える声で思想を語りますよね。「この国は年寄りが増えすぎて財政を圧迫して…」というような。そして語り終えたあと自殺します。まず、堂々と言え!と思いましたね。震える声じゃなくて。コントラバーシャルな映画になるしかないんだから、徹底して「年寄りを殺して頭数を減らせば国がよくなる」理論を叫んだらいいのに。映画の中で、「そうした発想は間違ってるよー」って示さなくったって間違ってるのはわかります。いかにプラン75が欠陥があるのかが示されますけど、逆に「え、プラン75は本当に国がよくなるかも知れない」と思わせてくるくらい狂った説得力を持って、私たちの心の隅にいる悪魔に栄養を与えるような映画が観たかったですね。とても常識的な人たちばかりで、いまと変わらない社会で、ならなぜこんな制度が始まんだって。
 最後叔父の遺体を盗み出して別の場所で火葬をしてもらおうとするシーンは面白かったです。情がある叔父。すでに亡くなっていたとしても、死体としてone of themとして処理(荼毘に伏すのでなく)されるのは耐え難かった。多くの日本人同様、ひろむ君は自覚的に宗教に厚くはないと思いますが、遺体の扱いにおいて耐え難いことがある。ここでは日本人の無意識には確かに、超越に関する共通認識がある、という気づきを得た気がします。そこに今よりは繋がれるヒントがあるように思いました。
 また日曜日の昼下がりに映画館で鑑賞したんですが、私以外の客がお年寄りの方ばっかりで。まさに70歳前後だという方々がこんな映画見せられて、何を思ってるんだろうと思うと気まずくて仕方なかったです。映画が終わったあとお年寄りの方が話しているのが聞こえました。「内容が内容だから、私なんか身につまされて」「最後があったからよかったけど」「若い人に観てほしいわね」などなど。
 声を大にして言いたかったですね。身につまされることはないですよ!フィクションだと吐き捨ててください!こんな制度ができたら「利用した方がいいのかなあ」等と考えないで!ふざけんなと看板を蹴っ飛ばしてください!と。

とびこがれ
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