劇場公開日 2022年6月17日

  • 予告編を見る

「人生○○年時代とは何なのか」PLAN 75 マガランさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生○○年時代とは何なのか

2022年8月1日
Androidアプリから投稿

ずっとこのことが頭の中に居座っていた。
今は「人生100年時代」と言われて、平均寿命が世界でトップクラスであることを謳いながら、同時に少子高齢化がものすごいスピードで進行していながら何の対策も打てていない現状に問題点を提示するような作品だった。

全体的に説明が最低限で少なく抑えてあるところは良かった。あれはどうなるのだろうか、どうなったのか、観る側に預けられているのがいい。

磯村勇斗と叔父(伯父)さんとの関係は、自分と甥っ子(今5歳、4歳)たちとの関係性を考えずにはいられず、話が進むにつれて他人事ではないと感じながら観ていた。あと30年くらい経てば同じ問題に直面する未来が待っているのだろうか。

河合優実と倍賞千恵子、特に河合優実のパートがもう少し欲しかった印象はある。普段は禁じられている対象者の倍賞千恵子に出会って彼女は変わるのか変わらないのかという描き方のバリエーションも出てくるし、磯村勇斗とは違う向き合い方も見せられるのではないかなと思いながら観ていた。

倍賞千恵子の同僚で孫のベビーシッターをやることに愚痴をこぼしていた人が印象に残る。PLAN75の体験会で豪華なホテルのような場所に行った体験を話し自分も最後はこういうところで迎えたいと言いながら、倍賞千恵子がベビーシッターをさせてもらえないか頼むとやんわり(電話の声は聞こえないのでやんわりではないかもしれないが)断っていたように、PLAN75を自分事として直面していない高齢者もいるんだなと考えると、経済的、あとは地縁や血縁など様々な縁に支えられているかどうかが大きいのかなとも感じるが本当にそれだけだろうか。

家族や共同体の形を規定しすぎてやしないか、それによって人の繋がり方の多様性が阻害されていやしないか、とも考えてしまう。
年齢を重ねることがこれほど恐ろしく感じさせることもないか、そんなに恐ろしく思わないといけないのかなとも同時に思いながら、ギリギリのところでそれでも生きることを選んだ倍賞千恵子の姿に何を見るか。

磯村勇斗がたどり着いた火葬の真実は現実にありそう。映画「ソイレント・グリーン」みたいだけど。

倍賞千恵子と河合優実がボウリングしてストライク取った後、隣のレーンの若者とハイタッチしてるのを見てこういうところに微かでも希望の光を観たい気がした。

マガラン
momokichiさんのコメント
2022年9月19日

>年齢を重ねることがこれほど恐ろしく感じさせることもないか、そんなに恐ろしく思わないといけないのかなとも同時に思いながら、ギリギリのところでそれでも生きることを選んだ倍賞千恵子の姿に何を見るか。

考えさせられました。

momokichi