「人間には無理。」PLAN 75 こまママさんの映画レビュー(感想・評価)
人間には無理。
この映画の存在を知ってから、観る前はもしこんな制度があったらってことを考えてましたが、
「もしこんな制度があったら」じゃなくて、"今"の先にはその未来があり得るってこと、それを踏まえて"生きる意味"を考えなきゃいけないんだと、思わされました。
序盤で、倍賞千恵子さんがカメラ目線でこっちをジッと見てきて、ドキッとしました。あの瞬間は角谷ミチじゃなく倍賞千恵子だった。倍賞さんが、「よくこの映画を観に来てくれたね。あなたも考えてみて」って言ってるみたいで。
後半には河合優実さんも。倍賞さんより短かったけどやっぱりカメラ目線で、「あなたはどう思う?」って言ってるみたいで、また心臓がギュッとなりました。
あの2人の目ヂカラは強かった〜。映画だから見ていられたけど、実際に対面したらきっと目を逸らしちゃう。
私は、制度としてはあってもいいんじゃないかとは思います。
年齢のせいで社会から追い出される人のいる今の社会がつくる制度として。
(逆に言えば、年齢のせいで追い出されることがなくなれば必要ないことなんだけど、そこを突き詰めると不老不死とかの話になってきちゃうからそれはちょっと置いといて)
でも現実的には、問題山積みですよね。
まず、自分自身の考えで決断できる人に限られるでしょ。
認知症とか障害があるとかで自分の考えを伝える手段を持たない高齢者は、下手したら「本人の希望です」って言って家族とか周りが10万円もらって安楽死させる可能性だってあるし。
そうしてしまいたいと心の片隅で思っちゃうのを打ち消しつつ必死に介護を続ける人だっているだろうし。
孤独な高齢者に"寄り添って"10万円を狙う輩も出てくるだろうし。てかこの映画で河合優実さんが演った成宮さんも、「ルール違反だけど黙ってれば」って実際に会ったのって、最初はそれを狙ってたんじゃないかと思ったんですよね。相手から言い出したことだし、私は"寄り添って"あげてるだけって自分に言い訳して。
「寄り添ってあげて、気持ちが変わらないように誘導する」っていうそのお仕事、健全な精神状態で続けられるものなのかな。
"死"へ誘導するお仕事だなんて、まるで死神。。
とかってことを考えると、制度としてあってもいいとは思うけど、それが健全に運用されるとは到底思えないので、人間が扱っちゃダメな制度ってことですね。
でも、高齢化社会は"今"現実にここにあって、年齢のせいで追い出される人がいるのも現実。
まずはこの現実を知って、考えて、家族や友人と話して、"生き方"を考えるきっかけとして、とてもいい映画だと思います。
最後のミチさんの行動、あれがまさに、"生きる"ってことですよね。
人間としては生きることを終わらせてしまいたいと考えたけど、殺されてる人を前にした時、生き物として自分の命を守る本能がミチさんを逃げ出させた。
あのあとミチさんはどうするんだろうってとこも含めて、考えさせられる映画です。
知らずにいた方が楽だったかもしれないけど、でも、観て良かったです。
ぼやーと思っていたことが的確に言語化されていて、感服しました。
>健全に運用されるとは到底思えないので、人間が扱っちゃダメな制度ってことですね。
ほんとそうですね。人間には生き死の制御は無理です。(クローンとかも然り。)
最後のミチさんの毅然とした表情が救いです。
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映画レビューを投稿しています。
現在、キネマ旬報への2回目の掲載に挑戦中です。
こちらのサイトには、今年2月に登録したばかりです。
宜しくお願いします。
では、また共感作で。
-以上-
>みかずきさん
コメントありがとうございます。
確かに、少子高齢化はセットですね。
このPLAN75で高齢者にかかる税金が減る分を少子化対策に、とまでは言ってないですもんね。
少子化は少子化で、子供を増やす方向に進むのか、少子化を受け入れつつ社会を成り立たせる方向に進むのか、いずれにしろ抜本的な改革が必要でみんなが自分事として真剣に考えなきゃいけない問題ですし、そういう映画、あってもいいですね。
私も自分の寿命は全うしたいです。
生きてることで周りに迷惑をかけてるんじゃ?とか心配をしないで済む社会だといいですね。
>レプリカントさん
コメントありがとうございます。
シルバー民主主義って言葉、知りませんでした。でもなるほど今の社会を言い表してますね。
日本人は何か行動を起こして変わったっていう記憶を持っていないから政治に興味のない人が多いと思ってるので、レプリカントさんの言う「もっと主張すべき」には賛成です。主張してひとつ良い方に変われば、それを前例にいろんな立場の人が声をあげやすくなるし。その結果、高齢者も生きやすい社会になるといいな。
>もーさん
コメントありがとうございます。
私はこう思いましたが、皆さんのレビューを見ていると本当に色々ですよね。
もーさんの「生きていればなんとかなるという決意」にも共感です。少なくともミチさんならなんとかしていってくれると思いたいって希望もありますが。
あの部分の受け取り方も含めて、たくさん考えさせられる映画でした。
共感ありがとうございます。
本作は、少子高齢化問題の高齢化に切り込んだ作品ですが、
例えばPLAN0(仮題、0歳という意味)という題名で、
少子化問題にも切り込んだ作品を作って欲しいと感じました。
少子高齢化はセットで解決すべき問題ですので。
因みに、私は、煩悩多き人間なので、せっかく授かった生命は、
最期まで全うしたいです。生き切りたいです。
-以上-
こまママさん、こんにちは。「人間としては生きることを終わらせてしまいたいと考えたけど、殺されている人を前にした時、生き物として自分の命を守る本能がミチさんを逃げ出させた」的確な洞察だと思います。私は上手く言い表せなかった😅