「最後尻すぼみでちょっと残念」PLAN 75 リボンさんの映画レビュー(感想・評価)
最後尻すぼみでちょっと残念
本人が自ら登録する、現代版の国営姥捨て山とでも言いましょうか。。
まぁ、75歳以上は自分で死を選べるという制度なので内容は予想出来るんですが、これを映画としてどう表現するのかな?と見てみました。
①78歳の老婆、②このPLAN75の行政職員、③海外から来たこの施設で働く介護士のそれぞれの視点で見せることは良かったです。
①自分が独り暮らしで仕事も解雇され次は車道の立ちっぱなしの交通整理員くらいしか見つからなかったら賃貸団地の家賃も払えないし生活保護は嫌だ、となればここしか行くところ無いかもしれない。
②行政職員として淡々とまるで銀行の定期預金か生命保険でも勧誘する感じで対応してるだけなら対してなんとも思わないかもしれないけど、いざ身内の伯父さんが申し込みに来たら「いくら国営でも合法的な集団安楽死で遺骨が混ざって分からなくなる合同埋葬される場所だよ!」と思い、
自分の伯父さんだけはつい勝手に連れ出して個別に火葬に出そうとするも最短4日後しか火葬炉の空きが無く、本日16時ならと言われて車を飛ばしたらスピード違反でパトカーに止められるという。。
職員としては気にしない仕事内容でも、身内のことになると途端にそんな施設に高齢の身内を行かせたくなくなる。。だから3等身以内は担当出来ない仕組みだったけど、疎遠だったせいで最初だけ顔を合わせてしまったから難しい。
③外国人の介護士の若いお母さん、現実にも日本人には人気もなく体力のいるこの仕事のなり手として多くいるのかな、と思いました。毎日亡くなる高齢者のフォローをしてるけど、本人は病気で手術代の要る幼い娘を生かすために少しでもお金を稼ぎたい。
それぞれの視点から見せることは良い手法だったんですが、最後がなんだか尻すぼみで残念でした。
①老婆の主人公は隣りのベッドで亡くなってゆく同じ立場の老人を見て、麻酔のマスクを自ら外して施設を飛び出してしまうけど、もう住んでた団地は担当職員によって大家さんに引き渡しされることは契約にあったから帰る家なんてない。外で野垂れ死にするほうがいい!って思ったのかな。。。
外を歩いて歌って。。。そしたらここでもう描写は終了。外で亡くなってしまうと遺体は泥とか草とかで汚れてしまうかもしれないのに。。気持ちを落ち着けて戻ったりはしなかったのか、本当にそのまま外に居続けたのか?結局彼女がどうなったのか分からずモヤモヤ。
②パトカーにスピード違反で止められた行政職員の彼も、助手席に亡くなった伯父を乗せたまま、映画の描写はこれで終わり。キップ切られただけで無事に伯父を火葬場へ連れていけたのか、勝手に連れ出した罪とかにも問われてしまうのか?このPLAN75を利用した場合のこの世界観での法的措置がどうなったのか何の説明も無くモヤモヤしました。
**********
自分は老後をどう生きるのか、どうするのか?というせっかく誰にもあてはまる普遍的なテーマを扱ったのに、脚本の締めが甘くて残念でした。でも俳優さん達は皆良い演技だったと思います。
最後に。鑑賞料金が安くなる曜日だったからでしょうが、それにしても中高年以降の方達でスクリーン中規模くらいですがほぼ満席でした!
関心のある世代は多いんだな、という実感は湧きました。