劇場公開日 2022年5月6日

  • 予告編を見る

「時代に先駆けた女性ロックスターの肖像」スージーQ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0時代に先駆けた女性ロックスターの肖像

2022年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

スージー・クアトロが日本でも売れ始めて公演にもやって来た1970年代半ばは、私が洋楽を聴き始めたころと重なっていて、もちろん名前は覚えているが、当時の関心は同時代のミュージシャンよりも60年代に活躍したビートルズなどに向かっていたせいで、彼女のヒット曲をほとんど知らなかった。本作にも出てくる、スージー・クアトロに影響を受けて登場したザ・ランナウェイズの方が十代へのインパクトは大きかったと記憶している。

そんなわけで、本人や家族、音楽活動に関わった人々の証言で浮かび上がる女性ロックスターの肖像、栄光の日々と家族との確執といった影の部分とのコントラストなど、このドキュメンタリーで知ったことも多かった。彼女のファンなら、興味深い逸話の数々を楽しめるのではないか。

一方で、音楽好きには物足りなさも残る。とにかく本人と関係者や影響を受けたミュージシャンらの思い出話が長くて、彼女の代表曲の音楽的な解説や、ベースプレイについての話はほとんど語られない。演奏場面も、テレビ番組に出演した際の映像やミュージックビデオが断片的に流れるだけで、あわせてシングルの各国でのチャート順位が紹介される程度。本作はオーストラリア製作で監督もオーストラリア人だが、スージー・クアトロの楽曲の魅力よりも、時代に先駆けた女性ロックスターとしての存在意義を強調したかったようだ。

高森 郁哉