「ユルいけど…描いているのは真っ向からの社会風刺!!」映画 妖怪シェアハウス 白馬の王子様じゃないん怪 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
ユルいけど…描いているのは真っ向からの社会風刺!!
『妖怪シェアハウス』というドラマをご存じだろうか?
『モンスター・ホテル』に触発されたような深夜帯のドラマで、ビジュアルがいかにも日本の痛々しいコメディといった印象。そんなものが良い作品なワケがない……というイメージを持っている人も多いはず。
そう思っている人は、一旦邪念を捨てて観てもらいたい。この『妖怪シェアシハウス』という作品……かなり社会派で、なにより深い!!
毎回登場する妖怪たちが問題を起こすというより、社会問題に妖怪たちの視点で切り込むもので、悪はどちらかというと人間側である。
ハラスメントやネットリンチなど、日常に潜む社会の闇に取りつかれた人間(普通の人間)が毎回登場し、それを妖怪たちと解決していく。
妖怪はいたずらをしたり、驚かしたり、単純な行動目的でしかないというのに、人間は欲にまみれ、人間同士で傷つけあう見にくい生き物……。このテイストどこかで聞いた覚えがないだろうか。
そう!物語の構成が「ゲゲゲの鬼太郎」スタイルなのだ。ゲゲゲの鬼太郎もシリーズによって温度差はあるものの、初期の作品は、まさに社会風刺としての側面を持ち合わせていた。
そんな意思を継いでなのか、今作もビジュアルは『妖怪大戦争 ガーディアンズ』の悪夢が蘇るようであり、ユルいギャグに寒気がすることもありながらも、真っ当な社会風刺を貫いている。
さて本題の映画版だが、軽いキャラクター紹介が入るし、総集編的にセルフリメイクシーンもあったりと、テレビシリーズを観ていなくても内容は理解できるようになっている。
ただ、『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』の最終回から直結する物語となっていて、謎のままだった妖怪の闇落ち問題や閻魔大王の存在の謎などが、一気に明かされていく。
テレビシリーズでも哲学的なことには、多少触れてきてはいたものの、映画版では、哲学的な部分にがっつり踏み込んでいる。
人間は欲や執着といった醜い感情があるが故に、互いを騙し傷つけあう。だったら、そんな感情を浄化してしまえば、争いのない幸せな世界になるではないか……という、エコテロリストやカルトが言いそうな(モデルは『ミッドサマー』だと思うが)ことを実現させようとする存在が現れることで、人間の存在意義、そして妖怪の存在意義について踏み込んでいくという、ゲゲゲの鬼太郎やドラえもんなどの王道劇場版プロットでもありながら、濃い内容になっている。
しかし、それを濃い内容だと気づかせないユルさでコーティングされているのが、このシリーズの難点でもあり、逆に醍醐味でもある。どちらに捉えるかで観方が全然変わってくるだろう。
主人公と松本まりか演じるお岩さんとの、人間と妖怪の垣根を越えた友情が深るシーンもあったりと、所々にプチ感動シーンも散りばめられている。
あと忘れてならないのは、ドラマ版同様に宇治茶の劇メーションシーン。『燃える仏像人間』『バイオレンス・ボイジャー』好きであれば、外せない作品だ!!