「考えさせられる」小さき麦の花 ぞのさんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられる
時代は2011年、現習近平政権への交代前年。
家族のお荷物の男女が追い出されるように縁談を取り付けられ結婚。
農村部で極貧生活の中地道に生きていくお話です。
全体的に地味だけど、色んな意味で中国という国について考えさせられるとても良い作品でした。
中国内の貧困格差は凄まじく、貧困地帯の命はあまりにも軽い。
作中、主人公が富裕層への輸血のために何度も協力させられるシーンがありますが、中国での違法な臓器売買を連想させます。
また後半、あっけなく妻のクイインは川に落ちて死んでしまいます。
ラストの解釈は色々とあるようですが、個人的にはヨウティエは後追い自殺したのだろうと思っています。
身辺整理し全ての人へ借りを返して、妻が自分に食べさせたかった卵を食べ、遺影を見つめ、草のロバを手に横たわる。作中、ヨウティエが「草のロバはいい、餌もいらないし、こき使われることもない」と言っていましたが、自分ももう誰にも搾取されなくて済むと思いながら亡くなっていったのかなと思いました。
また、その奥に意味深なボトルが配置されているのが印象的。
(同時期、中国の農村部では服毒自殺の割合がとても高かったそうで、作中のボトルは毒を象徴しているのかなと。。)
ラストは唐突に兄が「ヨウティエも町に住むのか 新生活だな」という台詞があり、物語は終わります。またエンドロールの最後でも中国語で「ヨウティエさんは政府と熱心な村人たちの援助により新しい家へ引っ越し、新しい人生を始めた」のいう内容が書かれています(英語訳の記載はなし)。
意味深すぎる。。。これも勝手な憶測ですが、中国政府の検閲により自殺シーンを改変・政府の政策PRにつなげたのではと。
作品の描写やストーリーからも、そして現実面からもあらゆる面で中国という国を考えさせられるとても興味深い作品でした。