「タイトルなし」小さき麦の花 えみりさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
老人がいっぱい見に来ていた。
農民のミラクルな生活、そして重労働のリアリティ。中国の村の文脈などなどわかった。
性的な描写は入ってこないけれど、夫婦の愛情が美しく、それは自然や動物への愛情と通底している。
といっても、農業は身体が関与し、麦の花は美しいと共に、愛情と身体の交叉点でもある。彼女がロバを撫でるとき、それは夫の身体への愛情も喚起させる。
彼は馬鹿なように周りから表象されているけれど、約束を忘れず、真っ直ぐに働く、頭のいい男でもあった。
農業には生産性があらわれる。こんなにミラクルにものを生み出し仕事をやめない彼がピタリとやめたのは驚きだった。妻への愛が、彼の抜き難いハビトゥスをすっかり壊してしまうのを見る。
それに比べ、ロバや鶏や燕は元の場所に戻ってきてしまうのだ。そのことがとても切なかった。
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