劇場公開日 2023年6月30日

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「うっすら漂う絶望に対して」小説家の映画 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0うっすら漂う絶望に対して

2023年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年。ホン・サンス監督。スランプに陥った小説家は久しぶりに郊外の後輩を尋ねに行く。過去のちょっとした行き違いもなんとなく和解した後、今度は偶然、旧知の映画監督と出会う。こちらは過去のわだかまりが解けないまま、その監督を通じてたまたま出会った俳優(キム・ミニ)と会話が弾む。そして映画を作ろうということで意気投合して、、、という話。
その映画作りで「物語はたいして重要ではない」と言われているのは、この映画自体の解題。また、小説家が話す3グループとの会話はずれながらも同じような内容になっている。そしてこの会話の発言(または無言の間)から漂ってくるのは、そこはかとない絶望感。冒頭の後輩との会話の後、観光名所のタワーに上るのだが、見ている方は不吉な予感にどきどきしてしまう(最後の映画館でも屋上に行くのでまたどきどきする)。
何か始めなければということで映画づくりをする小説家だが、危なっかしいことこのうえない。それを土壇場でぐいっと支えるのは、最後に小説家が撮ったという体で流れるキム・ミニの映像。ところが、どうみてもこの映像はホン・サンスが実生活でパートナーであるキム・ミニとの「純粋な愛」を撮影して映像として流れている。つまり、映画内でのお約束など無視して、ここで「純粋な愛」の映像を見せなければならないということなのだ(ちなみに、全編モノクロでここだけカラー)。
これを喜ばしく見るか、あざとい手法だと見るか。わたしには深い絶望に見えました。

文字読み
トミーさんのコメント
2023年7月13日

ドキュメンタリーを強く否定する辺り、これは自分が創り上げた美しい作品という強い思い入れが感じられました。

トミー