劇場公開日 2024年5月3日

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「もっと取り上げてもいい作品」ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ ぇんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0もっと取り上げてもいい作品

2024年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

9.11の直後になぜか素早く「アルカイダ」が実行犯であることを特定され、アメリカ国民のみならず世界中で「アルカイダ」=「イスラム教徒」=「テロリスト」の(間違った)認識が広まったところに、イスラム国家であるトルコから(国籍変更していない)ドイツに来て定住していた家族の長男が「嫁さんのために」敬虔なイスラム教徒になろうとしたことが全ての悲劇の始まり。
9.11の実行犯とされたテロリスト=アルカイダ=イスラム教徒すべてをアメリカの敵と決めつけた当時のブッシュ政権と、それに乗せられたアメリカ人により、無関係なトルコ人がイスラム教徒と言う理由だけで拘束されその後も憎悪される。
ドイツに住んでいながらトルコ国籍のまま・・・日本にも同じような「特定外国人」がいるため他人事とは言えない・・・ドイツの役所もトルコの役所も「自国民ではない」ことを言い訳に本気で動こうとしないお役所体質。
キューバに残された唯一のアメリカ領であるグァンタナモ収容所は「国外」であることを言い訳にアメリカの施政権が及ばない「無法地帯」と化している。
これらすべてのネガティブ要素と何年も辛抱強く戦い続けた弁護士と母親の奮闘には(実話であるだけに)感嘆しかない。SNSの無い時代に数少ない(良心を持った)味方を見つける苦労。乗り気でないマスコミを抱き込んで、やっと釈放にこぎつけたが、喜ぶには時間がかかりすぎた。(幕間に挟まれる・何日経過の数字が重い) エンドロールで更に気が重くなった。
唯一クルナス母さんの底抜けの性格とタクシー運転手の逸話に救われた。

日本でも過去の冤罪事件が少しずつ解決を見ているが、それらに関心を持った人、アメリカの中東政策に関心を持つ人、ドイツに移住したトルコ人の境遇と移民問題に関心がある人・・いろんな人に見てもらいたい。

ぇんちゃん