「スイスで暮らす著名な映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノ...」苦い涙 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
スイスで暮らす著名な映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノ...
スイスで暮らす著名な映画監督ピーター・フォン・カント(ドゥニ・メノーシェ)。
著名ではあるが、ここんところはややスランプ気味で、新作を思うように撮れていない。
無口で従順な助手のカール(ステファン・クレポン)が見の回りの世話をしているが、カールにはこれといった感情を抱いていない。
さてある日、元妻で親友の大女優シドニー(イザベル・アジャーニ)がピーターのもとを訪れる。
連れてきたのはトルコ系の青年アミール(ハリル・ガルビア)。
一目でアミールに恋したピーターは、彼をスクリーンデビューさせるといって同居させ、物狂いの恋の日々となるが、数か月するとアミールはピーターのことなど尻の毛ほども気にしない・・・
といった物語で、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの戯曲をフランソワ・オゾンが監督したもの。
ファスビンダー戯曲の映画化といえば、初期に『焼け石に水』を監督したオゾン。
あの作品は、演劇臭が強くて、内容的にもさほど面白くなかった(いま観ると違った印象かも)。
なので、本作もそれほど期待していなかった。
特に主演のドゥニ・メノーシェには、コワイおっさんというイメージしかなったので、観る前は戦々恐々。
ま、そんな強面のおっさんが恋に狂ってしまうさまが面白いのだが、それ以上のところには誘ってくれない。
アミールに去られて、別の男性に言い寄るもしっぺ返し・・・というのは定石的で、面白いのは、ピーターの母親と先妻の娘とシドニーが、ピーターの誕生祝に駆けつける一幕の混乱ぶりで、ここは女優陣の頑張りがあったゆえかしらん。
それほど期待していなかったのでそれなりに面白かったのですが、全体的には平凡かな。
意外と舞台劇臭がないのはよかったです。
オゾンのファスビンダーへのリスペクトぶりはわかりますが。