「恋で人は幸せになり、愛することで苦しみを覚えていく」苦い涙 未佐緒00さんの映画レビュー(感想・評価)
恋で人は幸せになり、愛することで苦しみを覚えていく
恋に堕ちる過程を見ていると人は滑稽で哀しい生き物だなあとしみじみ思ってしまいます。
美少年に一目惚れする映画監督、金と名声はあるけど若さと美貌はない、そんなオジサンが若い青年に恋をする。
人は自分はないものを相手に求めてしまうけど、バランスの差がありすぎるとどこかでぼたんのボタンの掛け違いみたいな狂いが生じてしまうものなんだなあと。
自由奔放に振る舞う青年の態度に苦しむおじさんの姿は見ていて可哀想というか哀れみを感じてしまうのですが。
おじさんも今まで恋愛をしてきたのではと思ってしまうのです。
自分は、こんなに愛しているんだと、だから愛してくれと相手に見返りを求めるのは人間なら当然と思ってしまうのですが、若い恋人はそれに対して束縛しない。
フィフティフィフティ、同等の関係でいたいというのは自分が愛されていることを分かっているから、でも、これって今のうちと観ている側は思ってしまうのです。
愛も恋も永遠ではない、でも恋に堕ちた最初は、それが分からないというか、見ないふりをしているんだと思います。
青年は誰とでも寝て恋愛をすることに恋人かがいても罪悪感など感じない、そういう生活を送ってきたから仕方ないと思いますが。
かたや監督は、そういう恋愛を受け入れられない性分なのが見ていて辛いのです。
この映画は元ネタは女性同士の話を今回、現代でゲイに置き換えたらしいですが、多分女性ならもっと残酷な内容ではと思ってしまいます。
秘書のカールが最期まで無言の演技なのはびっくりしました。
最期、監督が彼に謝り、もしかして彼を恋人にしようとしているなんて思ったのですが。
いくら秘書とはいえ、干拓の態度はちょっとひどすぎないと思っていたので
「ああ、やっぱり」
というラストシーンです。
最期にシドニー、彼女の台詞、「優しくしてあげた」という台詞には。
ああ、二度とこの男二人は会う琴はないんだなと、ちょっと切ない気持ちになってしまいました。