「ひとつ屋根の下から始まり、巣立つ人々の群像」午前4時にパリの夜は明ける うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
ひとつ屋根の下から始まり、巣立つ人々の群像
80年代初頭のどこか浮足立った世相のフランスを舞台に、離婚を機に第2の人生を歩み始める女性・エリザベートが主人公。
離婚して、子育ても殆ど終わって、2度目の青春とも言える日々に足を踏み入れるエリザベートの姿を、いわゆる女性向け映画のようなギラギラとした感じではなく、緊張と不安を率直かつ繊細に描いている点に好感が持てた。昼間の喧噪を避け、息遣いまで聴こえて来そうな深夜ラジオの時間をメインの舞台に据えたのも、エリザベートの人柄によく合っていた。
ほぼ専業主婦として暮らして来たエリザベートが、職場や家庭等、血縁の有無に関わらない様々なコミュニティの中の人々と交わることで逞しくなっていく姿が爽快だった。
派手な苦難や逆転はない物語なので、お仕事ものや成長ものとして観ると物足りないかも知れない。しかし、離婚や子離れという巣の離散を乗り越え、細やかに自分の殻を破って羽を広げていくエリザベートの物語、そして先述のようなコミュニティの優しさの物語と考えると、非常に美しい作品だった。
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