「あー、夜更かししたい」午前4時にパリの夜は明ける TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
あー、夜更かししたい
本作、初週の映画.comの評価はあまり高くない印象でしたが、IMDbの7.0の方に期待を寄せ、遅ればせながらの2週目で鑑賞です。連休中のシネスイッチ銀座は、比較的(本日の)サービスデイに無関係なシニアの皆さんが多かった印象です。
ちなみに暦通りの5連休中の私、初日の昨日にふと思ったことは「あー、夜更かししたい」。しかしながら、習慣と年齢には抗えません。しっかり0時過ぎの眠気に逆らわず、翌朝4時過ぎにトイレが我慢できずに目を覚まし、二度寝出来ても6時過ぎには起きて毎朝のルーティン。おそらく、残り3日も変わらないのでしょう。
元夫との別離、別居から精神的に参りつつも、二人の子供との生活を続けるため、結婚以来の専業主婦から脱却して働きに出ることを決心するエリザベート。ようやく手にした仕事は、自身も眠れない日々に聴き、そしてリスナーとして参加もして「救われた」深夜ラジオ番組のアシスタント(電話受付)。ある日の番組に出演する少女タルラとの出会いをきっかけに、エリザベートと子供たちに人生の変化が生まれます。
なお、本作は80年代のフランスが舞台。シーンの一部に当時の動画を織り交ぜつつ、全体的にも敢えてパキッとさせない柔らかい画だったり、深夜ラジオが一つの舞台であるため、窓から望む朝まづめ(夜が明けて明るくなり始めた頃から、日の出までの時間帯)の空と街の様子など全般、映像からも優しさが漂って感じます。
ただ、実際はミッテラン政権下で、不景気からの脱却を目指したものの成果はあがらないと言った厳しい状況で、大学生の長女ジュディットが政治活動に参加している様子や、タルラのように親の庇護を受けられずに路上生活を余儀なくされる若者も少なくなった時代です。
そんな、決して生きやすいとは言えない日常で、夫との離別による悲嘆と不安であまり眠れず、ついつい泣いて過ごしてしまう日々のエリザベート。決心して仕事を始めても、早々には巧くいかないジレンマでくじけそうになります。それでもタルラを捨て置けずに手を差し伸べるなど、いつも利他的な選択をするエリザベートの慈悲深さにただただ感銘を受けます。そして、いろいろあってもいずれ訪れる子供たちの巣立ち、またそんな彼女自身にも新しい人生と、終盤は本当に観ている私たちまで幸せを分けてもらえたようです。
私自身も兄の影響で子供のころからラジオを聴く習慣がありますが、最近は夜中の番組も便利にPodcastやradikoのタイムフリーに頼りがち。夜更かしして、ラジオを聴いて過ごす「ワクワク感」を思い出しつつ、やはり観てよかった一作と思いました。