「ジェーンが目指していたこと」コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
ジェーンが目指していたこと
アボーション(abortion)/人工妊娠中絶、今秋実施されるアメリカ大統領選挙においても大きな争点の一つとなることもあり、この作品に対しては勉強の意味も込めて大いに期待しておりました。で、鑑賞後の感想ですが、悪い作品ではないものの残念ながらやや期待外れな印象です。
上映時間こそ121分ありますが、総じて大した困難もなく案外トントン拍子で進む展開に深みは感じられません。勿論、この問題に様々な障壁があることは解ります。しかしながら、物語上における紆余曲折は主にジョイ(エリザベス・パンクス)の体験と葛藤が中心。そしてそのジョイの「決意の行動」も若干迂闊に過ぎるため、序盤こそハラハラしますが結局その繰り返しなだけ。作品に必ずしもカタルシスが必要とは思いませんが、思いのほか観終わって余韻は残りません。
そして、ジェンダーやジェネレーションの違いは当然として、多様な意見を取り入れている様子を表す意図で「ジェーン」のメンバーに聖職者(修道女)や異人種(アフリカンアメリカン)を配置しているのが、単に記号的でその立場として意見をいう存在にしか見えず、反って有りがちな手法で安易に感じます。
また、支持政党や選挙の結果などを敢えてセリフに入れ込むことで、結果的に作品をプロパガンダに利用しているように見えてしまいことにも白けます。勿論、作品の時代感から言えばその構図も今より判りやすかったとは思いますが、現代ではそれほどに単純ではないはず。むしろ、それを政治や選挙にだけ結びつけてしまうことによって政治利用され、「トップが変われば政策が変わる」ということさえ起りえます。果たして、それはジェーンが目指していたことなのか?政治は手段か目的か?
自分でもややケチを付けすぎかなとも思いますが、事実がもとになっているだけに、下手な演出に思えてやや鼻についてしまいました。悪しからず。