太陽と桃の歌のレビュー・感想・評価
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ウサギ好きにはホラー
2024年劇場鑑賞327本目。
前情報無しで鑑賞。昔命を救った恩で農園に使わせてもらっていた土地を孫が契約書ないなら出ていけと言われたら家族の話。
途中までは退屈を感じなかっのですが
え、ここで終わるの?という感じでこの後どうなるかを知りたかったのに。
後ウサギ好きはこの映画観ない方がいいと思います(笑)
極めて現実的な家族の苦悩
予告から、家族の感動的なストーリーを期待して、公開2日目に鑑賞してきました。しかし、なんだか最後までちょっと没入しづらく、朝イチの上映回だったこともあって眠気に誘われ、思ったような感動は得られませんでした。
ストーリーは、スペインで桃農園を営む家族が、今年も収穫の時期を迎えようとしていたある日、その土地をソーラーパネル事業に利用しようとした地主から突然土地を明け渡すように言われ、一家に関わる親戚も巻き込み、それぞれの立場でこの問題に向き合い、苦悩する姿を描くというもの。
立ち退きの危機に瀕して、家族が仲違いしながらも最後は共通の大切なものを見つけ、結束していく感動の物語を期待していたのですが、全然違います。どちらかというと、むしろ逆で、じわじわと心をすり減らしていく家族の末路を見せられているかのようです。
契約書もなく口約束だけで長年にわたって土地を所有し、そこで一家総出で桃農園を営む家族の姿は、豊かな自然の風景と相まって温かいものを感じます。そんな家族に対して、世代交代した地主が無慈悲に明け渡しを要求し、そこにソーラーパネルを設置するというのは、いかにも時代の流れを感じます。
この突然の危機に対してなんら解決策を見出せず、収穫の忙しさの中で追い詰められていく父。その一方で、賭け事に乗り出す祖父、隠れて大麻栽培を始める長男、農園を諦めてソーラーパネル管理の仕事をすすめる母。その行動の端々から、なんとかしたいという思いがあるのはわかるのですが、誰もそれを明確に口にしません。そのため、わかり合えるはずもなく、全員が独りよがりのようにも見えてしまいます。
そこに追い打ちをかけるかのように、桃を安く買い叩かれて怒りの声を上げる農家の姿が描かれます。農家たちが抗議のパフォーマンスとして、大切に育てた大量の桃をトラクターで踏み散らかし、それを投げつける姿に切なくなります。同時に、その踏み潰された桃が、強い力で押し潰された農家たちの姿と重なり、悲しくなります。
ラストは、自宅近くの桃の木をショベルカーが容赦なく倒していく様子を俯瞰して終わります。結局、強い力や時代の流れには、誰も抗えないということを訴えているのでしょうか。それでも、お気に入りの遊び場を奪われながらも次々と新たな遊びを発見する無邪気な子どもたちの姿に、わずかな希望を感じます。
ただ、極めて現実的な家族の姿が淡々と描かれ、ご都合主義的な救済もなく進むストーリーはちょっと退屈です。そのため、何度も瞬間寝落ちしてしまい、物語を正しく受け止められていないかもしれません。機会があれば、しっかり覚醒している時に改めて鑑賞したいと思います。
主なキャストは、ジョゼ・アバッド、アントニア・カステルス、ジョルディ・プジョル・ドルセ、アンナ・オティン、アルベルト・ボッシュ、シェニア・ロゼ、アイネット・ジョウノら。
私には退屈な映画だった。
名の知れた映画賞を獲っているし、私が鑑賞映画選びの目安としている週刊文春の映画評でも、高評価だった。
期待して鑑賞したのだが、タイトルどおりだ。言わんとしていることは分かるが、私の心を揺るがしはしなかった。演じているのは、俳優か素人なのかわからない。年齢が近いせいか、大家族の祖父にちょっと感情移入した。自分が土地賃貸借の契約書を交わさなかったことから、家族間の確執が始まった。
しかし、何十年前の事で口約束は日常的であったと思う。ゆえに同情できた。表立って苦悩を表現しない所がいい。
期待度◎観賞後の満足度◎ お母ちゃんのビンタとお父ちゃんの涙には泣いた。スペインの片田舎の一家族・親族の営みを描いた物語がどの国にも通じる普遍的な物語に昇華する時“映画”は“芸術”となる。
①冒頭とラスト、先ずプルドーザーを見せずにその音だけを聞かせ、それを見つめる顔・眼を撮したあとブルドーザーを見せる演出が上手い。
②また、登場人物達は日常的な会話はするものの、内面を吐露したり思っていることや考えていることを声高に叫んだり愚痴ったりしない。彼らの内面の感情・想いは全て彼らの行動・素振り・顔の表情・眼の表情で表される。
それもまた、非常に映画的だと思った。
③私は特に家庭的・家族的な人間ではないが、この大家族間の関係がわかってきたら、父方・母方の親族の姿とダブって見えてとても親近感が湧いてきた。
決して家族関係に共通点や類似点があるわけではない。
わが一族(ってそんな大層なもんではないが)は農家でもないし(先祖は多分水呑み百姓)。
でも、子どもの頃は聞いていても意味は分かっていなかったけれども、長ずるにつれて感じたり分かり出した親族間の微妙な空気、話題の本人のいないところでの親族間の話、伯母さん・叔母さん達の井戸端会議、お互い腹に何か有っても親族が揃うと表面は仲良くする感じ(本作の三代の大家族は妹の旦那以外はみんな血族だから、孫の兄妹の様に表面は反発したり批判的な眼で見ているけれども、やはりいざというときには家族のための行動をするから本心は親族思いなんだろう)等々とても身近で懐かしく感じる。
④一番辛いのはおじいちゃんだろう。家族にもそう言われるくらい。
恐らく内線の時に共産主義ゲリラから地主を守り食物を与えた恩義から土地を使わせて貰うようになった。でも、孫の代になると情も薄くなる。恩義も実感できなくなる。
この孫だってそんなに悪い人ではないのだろう。でも、やっぱり自分の土地は儲からない農作物を作るよりは儲かるソーラーパネルに使いたい。まあ、仕方のない選択ではある。ラスト、引き続き土地を使わせて貰えるようになった、という人情話で終わるのではなく、予定通り潰されるという形で終わる。何とも残念な結末だが、これも人の世である。
せめて自分が家族に出来ることとして、昔、先々代の地主の命を救った無花果の木から捥いだ無花果を今の地主に届けるおじいちゃんの姿が切ない。
⑤長男の言動には“何と意固地な”と思うところもあったけれども、契約書がない以上、土地を明け渡さないといけないという認識は誰以上にもあって、だからこの夏が最後という思いがより彼を意固地にしたのだろう。
同業の農民達の抗議活動に消極的だった彼は最後抗議集会に参加する。
彼の中に変化が現れ出したことを暗示するエピソードだ。
⑥
忍耐力が問われます
さて今回も鑑賞前の(本作の)前情報はほぼゼロ。もしかしたら劇場でトレーラーは流れていたかもしれませんが全く覚えがありませんし、映画.comのあらすじも読まずにサムネイルだけ見て「キッズ(がメインの)映画?」と想像しつつ、ベルリン金熊賞の受賞歴とIMDb評やRottenTomatoesの点数が高いという理由で劇場鑑賞を決めました。公開初日のシャンテ10時50分からの回、二日前にオンラインで予約しようとしたら、いつも自分が選ぶ席が早々に買われおり「これはひょっとして混むのかな?」と思っていましたが、結局は空いていました。。
で観終わり、映画.comのあらすじを確認したところ、がっつり説明してますね。とは言え、ネタバレってことはなくそもそもシンプルなストーリー。ところが、いろいろな観点でストレスを感じる121分の上映時間はなかなかしんどく、観続けるのにはそこそこの忍耐力が問われます。
ちなみにキッズ映画ではなく(w)、ある家族のそれぞれの目線で語られる群像劇。どの目線からも感じる「家族という呪縛」にわかりみが強いだけに本当にイタい。特に、長男で一家の家長であるキメットが兎に角頑固。主に外的な要因とは言え、時間的余裕なく追い詰められて相当なプレッシャーがあることは理解できるのですが、合理と割り切って逃げに出ること良しとせず、また兄弟たちの気遣いから出る意見や、更には助け舟にさえ抵抗して孤立していきます。そして、キメットの長男ロジェーと長女マリオナが、未熟な面はありつつも家族想いであり、本質的にはいい子なだけに更にイライラ。ところがようやくの終盤、溜まりに溜まった妻・ドロルスのある行動が目覚ましく、ここまで耐えてきたことが報われます。そして、そこから間もなくのシュールな終わり方に鑑賞後の余韻が深く残ります。
いやはや、劇場鑑賞でなければ最後まで集中力が保てなかったんじゃないかな。。また別の観点にはなりますが、カタルーニャの桃農園には当然外灯なんてないため暗いシーンは本当に暗い。と言うことで、(配信を)液晶画面で観るのは辛いかもしれません。決して「楽しい映画」ではありませんが、もし興味があれば是非劇場鑑賞をお勧めしたい一本でした。
悲喜こもごも、家族や親族で農業を営むところを見事に表現していた気がします
題材になっている事柄は、現代においては至るとこで目にするわけで、そしてそれは必ずと言っていいほど新しくなっていくことへの拒絶とか否定の気持ちが色濃く主張されている場合のほうが多い気がする。新しい未来、バンザーイ!これでみんな幸せで、しかもお金持ち、っていう場面なんて見たことがあるだろうか。しかも、太陽光発電そのものまでもが否定されかかっている現状、色んなフィルターがあっての観賞でしたが、果たして・・・
よくある家族の絆や亀裂を描きつつ、やっぱ別物・余所者への嫌悪感といったものが表現されていました。非常に丁寧で、かなり引き込まれて見入りましたが、もはやこういった表現こそがステレオタイプに見えて、もういいからそれでどうなったのかを見たいんだよ、と思ってしまいました。
人との関係性や繋がりなんかを眺めている分には最高の作品です。
太陽が生む食とエネルギー
スペインはカタルーニャ地方の桃農家のお話でした。親子3代に渡って桃を作り続ける一家でしたが、この土地にソーラーパネルを設置して収益性を高めたいらしい地主から土地の返還を迫られる中、一家に生まれた不協和音に焦点を当てていました。遠いヨーロッパの農村のお話ではあるものの、ソーラーパネルが国土を”破壊”しつつある事情は日本と同様で、その点が非常に興味深いお話でした。
ただ農業従事者の平均年齢が68歳と高齢化社会の最先端を行く日本の農村部の風景と異なり、本作の主人公一家は孫世代まで子だくさんで、その点は”明るい農村”の風景で、ある意味羨ましく感じたところでした。
本作を観て思ったのは、まずは邦題の秀逸さ。原題の「Alcarras」は、本作の舞台となった街の名前のようですが、邦題の「太陽と桃の歌」というのはまさに言い得て妙。本作の主題は”太陽の力”であり、従来は桃の生産を支えていた訳ですが、今後はソーラーパネルによる発電を支えることになる訳です。この大転換に際して、人々はどう対応すればいいのかがテーマの作品でした。
初代である祖父・キメットはギャンブルで土地を得ようとし、その息子・ロヘリオをその状況を受け入れられず、孫・ロジェーは大麻栽培を始めるなど、人それぞれ。太陽光発電の管理人として雇うという地主の申し出を受け入れるべきだという考えもあり、結局その不協和音がまとまらないままに桃の木は切り取られてエンディングを迎えるこのモヤモヤ感は、まさに現実世界とリンクするものでした。
因みにスペインの食料自給率は90%以上だそうで、40%を切る日本と比べると比較的高い数値になっています。スペインのエネルギー自給率は20%程度と、10%程度しかない日本同様低いため、農地を削ってエネルギーを得るという政策は、マクロ的には一定の説明がつくように思います。ただ日本の場合、食料自給率もエネルギー自給率も非常に低いため、双方の水準を引き上げて行かなければいけない状況であり、問題はスペイン以上に深刻なんだなあと、本作を観て改めて愕然としたところでした。
最後は映画と関係のない話になってしまいましたが、急速な環境変化が人間社会に不協和音を生むことを再認識させてくれた本作の評価は★4.2とします。
終わっても、終わらない家族。
ドキュメンタリーのように自然な桃農家の日常と、カットアウトされる生活の終了間際の日々が瑞々しい。家族の世代ごとにある、さまざまな『終わり』へのカウントダウンが、静かに、残酷に、暖かく描かれてゆく。そして、その農家を追いやる理由が、あまりに現実的で、切ない。
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