「3世代続く農園の今と大家族の肖像をリアリズムタッチで描く」太陽と桃の歌 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
3世代続く農園の今と大家族の肖像をリアリズムタッチで描く
シモン監督は長編2作目にしてカタルーニャ地方の大農園を描くことに加えて、おじいちゃんから幼い孫まで実に幅広い世代の目線を交錯させた群像劇という手法で勝負に出た。この意欲と挑戦。皆、素人でありながら本当の家族に思えるほどのナチュラルさで彩られ、ドキュメンタリーを見ているかのような手触りが日々を奏でる。その分、家族の集合場面はこちらまで笑顔になるほど楽しく、逆に農園の未来を憂う場面ではどうしようもない切実さが身を覆う。企業による大規模農業。それがもたらす価格下落。不意に生じる土地問題。桃の木を伐採してソーラーパネルを建てようとする地主。それによる家族の分裂・・・。昔どうりに永続できるものなんて何もない。今の団欒もすぐに歴史の残り香へと変わるだろう。明瞭ではないラストや誰に感情移入すべきか悩ましい語り口にやや感慨の度合いは割れそうだが、農業と家族を揺るぎない目線で見つめたリアリズムを評価したい。
コメントする