「歌うのは声のためじゃない 夜明けや明日のためでもない 歌うのは友のため 私のために命をなくした友のため」太陽と桃の歌 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
歌うのは声のためじゃない 夜明けや明日のためでもない 歌うのは友のため 私のために命をなくした友のため
上は歌の歌詞です。桃農園の大家族の一番年下の可愛い女の子とおじいちゃんが歌う歌です。私はこの歌を聞いて反省しました。声が出ない時期が少し続き、話せるようになった今もまだ納得いかない、そんな自分の我が儘さにがっかりしたからです。
日本では相変わらず野菜も果物もとても高い。日本の食糧自給率はとても低い。カロリーベースで3割台、ということは外国からの輸入依存が大きいのだから外交問題に力を入れてもらわなくては困る。スペインは9割以上の時もあったが今は7~8割位?映画の中の農民による抗議運動にあったように、桃一つに30セントかかるのを大手卸売り業者が15セントに買い叩く、だから農家は食べていけない、暮らしていけない、家を手放さくてはならない、若者は仕事を求めて別の土地へ行ってしまう。土地が家族が農家が散らばり潰れていく様子が太陽光パネルが設置される話と絡めて物語が進んでいく。
途中でこれはドキュメンタリーなのか俳優が演じるフィクションなのかわからなくなった。演じるのはその土地のカタルーニャ語を話せる一般の住人含む9000人を超える人達から選ばれたそうだ。本当の家族のようにリアルで自然な演技で素晴らしかった!
庭でテーブル囲む大家族ランチ。おじいちゃんもパパママも兄も姉も双子のいとこも大叔母さんもいてとっても賑やか。優しくておしゃれでハンサムなおじいちゃんは辛い立場に居る。おじいちゃんは孫娘に語る。スペイン内戦時代に友達を匿った。お礼にとその友達が土地を農地として使ってくれと提供してくれた。契約書なんてない。自分の命を守ってくれた友達へのお礼なんだから。でもそれが仇となる。土地所有契約を紙で交わし残さなかったがゆえに、土地は友達の息子世代が太陽光パネル屋に売ってしまう。
小さい子ども達の遊び道具だった壊れた車が持って行かれたり桃の木が切り倒されるが、それをやらかすブルドーザーの音は聞こえても映像は後になってやっと映る。それまで私たちはその音を聞きながら音の方を見る彼らの驚きと悲しみの顔をずっと見ていなくてはならない。家族三代で続けてきた桃農園の仕事はもうできない。日本の桃と異なって少し平たい可愛い桃、イチジクもあった、ランチではカタツムリがあったし、収穫後は家族総出で桃のシロップ漬け作業をしていた。
パパの片腕として働く高校生・長男にも、おじいちゃんとパパの気持ちがすごくよくわかる少しガンコな思春期の長女にも、まだ何にもわからず双子達と基地ごっこをしたり歯が抜けたお祝いに貰ったリコーダーをぷーぷー吹いてる末娘にも、明るくて幸せな未来が待っていると思う、そう思いたい。
歌は次のように続く:
歌うのは声のためじゃない
青空や潮風のためでもない
歌うのは土地のため
豊かな大地と愛する故郷のため