劇場公開日 2024年12月13日

「極めて現実的な家族の苦悩」太陽と桃の歌 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5極めて現実的な家族の苦悩

2024年12月14日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

寝られる

予告から、家族の感動的なストーリーを期待して、公開2日目に鑑賞してきました。しかし、なんだか最後までちょっと没入しづらく、朝イチの上映回だったこともあって眠気に誘われ、思ったような感動は得られませんでした。

ストーリーは、スペインで桃農園を営む家族が、今年も収穫の時期を迎えようとしていたある日、その土地をソーラーパネル事業に利用しようとした地主から突然土地を明け渡すように言われ、一家に関わる親戚も巻き込み、それぞれの立場でこの問題に向き合い、苦悩する姿を描くというもの。

立ち退きの危機に瀕して、家族が仲違いしながらも最後は共通の大切なものを見つけ、結束していく感動の物語を期待していたのですが、全然違います。どちらかというと、むしろ逆で、じわじわと心をすり減らしていく家族の末路を見せられているかのようです。

契約書もなく口約束だけで長年にわたって土地を所有し、そこで一家総出で桃農園を営む家族の姿は、豊かな自然の風景と相まって温かいものを感じます。そんな家族に対して、世代交代した地主が無慈悲に明け渡しを要求し、そこにソーラーパネルを設置するというのは、いかにも時代の流れを感じます。

この突然の危機に対してなんら解決策を見出せず、収穫の忙しさの中で追い詰められていく父。その一方で、賭け事に乗り出す祖父、隠れて大麻栽培を始める長男、農園を諦めてソーラーパネル管理の仕事をすすめる母。その行動の端々から、なんとかしたいという思いがあるのはわかるのですが、誰もそれを明確に口にしません。そのため、わかり合えるはずもなく、全員が独りよがりのようにも見えてしまいます。

そこに追い打ちをかけるかのように、桃を安く買い叩かれて怒りの声を上げる農家の姿が描かれます。農家たちが抗議のパフォーマンスとして、大切に育てた大量の桃をトラクターで踏み散らかし、それを投げつける姿に切なくなります。同時に、その踏み潰された桃が、強い力で押し潰された農家たちの姿と重なり、悲しくなります。

ラストは、自宅近くの桃の木をショベルカーが容赦なく倒していく様子を俯瞰して終わります。結局、強い力や時代の流れには、誰も抗えないということを訴えているのでしょうか。それでも、お気に入りの遊び場を奪われながらも次々と新たな遊びを発見する無邪気な子どもたちの姿に、わずかな希望を感じます。

ただ、極めて現実的な家族の姿が淡々と描かれ、ご都合主義的な救済もなく進むストーリーはちょっと退屈です。そのため、何度も瞬間寝落ちしてしまい、物語を正しく受け止められていないかもしれません。機会があれば、しっかり覚醒している時に改めて鑑賞したいと思います。

主なキャストは、ジョゼ・アバッド、アントニア・カステルス、ジョルディ・プジョル・ドルセ、アンナ・オティン、アルベルト・ボッシュ、シェニア・ロゼ、アイネット・ジョウノら。

おじゃる