マイ・ブロークン・マリコのレビュー・感想・評価
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「風立ちぬ」以来の煙草へのこだわりよ
ヒットした原作漫画をかなり忠実になぞっていて平庫ワカが描きたかったという「遺骨と旅する女」まんまのお話でそのイメージは分かるがさんざん虐待して自殺した娘を直葬して式もしない鬼畜親父が骨箱だけこんな立派なものを発注するとはとても思えずそれがずーっとひっかかり気になってしまったのが(あくまで自分が)残念。昨今の抑えた演技をぶっ飛ばすかのように叫ぶ、わめく、泣く、走る、飛ぶ、という命の生の芝居のドラマの映画の原初的な発露があまりにもストレートに演じられ嫌味なくすんなりと観る者の心を打って監督のそしてシイノを演じた永野芽郁の勝利なのだ。死者とつきあうことを、それには自分が生きていなければいけないことを明快に教えてくれた名作である。
タイトルなし(ネタバレ)
【良かった点】
白眉はラストカット!、手紙を読み、涙し笑みを浮かべる主人公、そこには何が書かれているのかあえて言及しないお洒落な終わり方が最高だった。毎日テレビで流れる人の死。その人たち一人一人に今回のようなストーリーがあり、大切な人がいる。そうしたニュースで消費され、流れていってしまうであろう気持ちを改めて気づかせてくれる良作。永野芽郁ちゃんの体当たり演技も魅力。遺骨とのロードムービーという斬新なストーリーも◎。
【良くなかった点】
マリコへの気持ちが追いつかず、若干マリコの言動にイラついてしまった。ただ、自分たちにとってはおかしな人でも主人公にとっては大切な存在だったんだと自分を戒めて鑑賞した。でもあんな友人は欲しくないな笑
役柄への没入感に感服
ねぇ、マリコ
マリコの気持ちに共感するよ、
ツラいよね。
いちばん信頼する人には
なぜか
手首切って見せちゃう気持ちわかるよ、
そんなの見せたら
嫌われちゃうかもしれんし、
でも信頼してるから
見せたい気持ちもあるし。
マリコは
骨になって
宙を舞ったけど
きっとこの映画は
私のように
誰かの胸に刺さるよ、きっと。
ダイナミック散骨
マリコがトモヨに依存していて、酷い家庭(というか父親)から
死んでしまったけど遺骨だけでもマリコを救う
という映画だと予告だけを見て思っていた
しかしそうではなくて・・・確かにマリコはトモヨに依存していて
トモヨに恋人が出来て自分をほっとかれたら死んでしまうと『宣告』していた
当のマリコはクズ男を恋人にてマリコに連絡しない日々もあった
こんな面倒臭い女・・・と普通の人なら思ってしまうが
実はトモヨも唯一自分を慕ってくれているマリコに依存していた共依存のような関係だった
しかしながらその遺骨を奪ってとある場所まで行くまでの道中というか
目的地にたどり着いてからのそんな偶然ありますかい?みたいな展開に
ちょっと笑ってしまった自分がいました(見方によれば良いシーンなんですけど)
最後のアレは実はそれを残していたって事が分かっただけで良しなんじゃないでしょうか?
評価 3.5
あぁ奈緒さんは良かったなぁ
最高のダチっす!自殺未遂者は共感度高いと思う
原作未読。主人公シイノ(永野芽郁)の友人のマリコ(奈緒)が自殺したニュースをテレビで知る所から始まる物語。
観る前のポイントとして、85分の短い時間でどのように話をまとめ上げるのかなと考えていました。
友人というより、レズに近い2人の愛情が美しいです。最近、ゲイの映画はあるけどレズは少ないので、もっと取り上げてほしいですね。
最後の方の草原のシーンは、少し心を動かされました。
次に気になった点を挙げます。
遺骨を持って包丁を突きつけるシーン等、少しリアリティーに欠けるかなと思いました。
永野さんの1人芝居が多いので、少し浮いた印象を持ちました。
ひいきにしている永野さん主演なので、星4にしたかったのですが、最後のオッサン臭い歌でテンション上がりませんでした。
ちなみに永野さんが吸っているタバコは、ニコチンは入っていないので、本物のタバコではないそうです。美容や健康には影響ないでしょう。
永野芽郁ワールドを堪能した映画でした。
やさぐれ永野芽郁が良い
突然、何の前触れも無く大切な人がこの世から居なくなった喪失感は、まさに人生の滅亡を感じます。
しかも、自らの手で断を下した結果となれば尚更だと思います。
その喪失感とどう向き合って生きていくか?
やけっぱちになって後を追うのか?
それとも生ける屍、魂の抜け殻の如く生きるのか?
人間は都合の良い動物で、忘れると言う方法で多くの痛みから逃れる術を持ち備えていると聞いたことがあります。
歯を食いしばって頑張りましょう💪
ラストシーンでの主人公の泣き笑い、あの手紙には何がしたためてあったのでしょうか❔
【”シイちゃん、助けてよ・・。”今迄の役柄とは大いに異なる”哀しきやさぐれキャラ”を演じきった永野芽郁と、”虐待され続けた女性”を演じた奈緒の演技が光る作品。鎮魂の旅を描いたロードムービーでもある。】
ー ブラック企業で働くシイノ(永野芽郁)、と幼い頃から父(尾美としのり)に虐待され続け、心が半分壊れてしまったマリコ(奈緒)は、幼い頃からの親友。
マリコは、キツイ日々をしいちゃんに手紙を書く事で、心の均衡をギリギリ保っている。
そんなある日、しいのは、マリコの転落死を知り、彼女を幼い頃から虐待して来た父が、直葬された事に憤慨し、包丁を持ってマリコの実家に乗り込み、遺骨を奪う。
そして、マリコが生前行きたがっていた”まりがおか岬”に、”二人”で旅に出る。-
◆感想
・最も驚いたのは、永野芽郁さんのそれまでの清純派的な役柄とは大きく違う、やさぐれキャラを演じきった姿である。
ブラック企業の上司に対する言葉遣い、マリコの父へのドスの効いた啖呵(劇中では、マリコの姿が被る。)。
ー ”こんな演技が出来るんだ!”と驚くとともに、女優としての幅が広がった事を眼にし、素直に嬉しく感じる。-
・奈緒さんも、虐待され続けて、心が半分壊れてしまった女性を、あの柔らかな存在感を保ちつつ諦観した表情で、演じている。
ー マリコが、幼い頃から心の頼りにしていたシイちゃんへの想い。それは、そのまま多くの手紙となってマリコの手元に残っている。-
・シイノが、マリコの遺骨を持って、”まりがおか岬”へ向かうシーン。バスの中で会った少女と、軽く会釈するシーン。
ー これが、後半に効いてくるとはなあ・・。-
・シイノが旅先で出会ったマキオ(窪田正孝)が、どこか影がありながらも、シイノを何度も助ける姿。
ー ラストで分かるのだが、彼も又、一度は自殺しようとした故の、優しさであろう。彼が、シイノがひったくりを追いかけた後、遺骨の傍にずっといたシーンでシイノに言った言葉。”だって、これは置いておけないでしょう・・。”
そして、”もういない人に会うには、生き続けないと・・。”とシイノに話しかけるシーンも良い。-
<ひったくりを捕まえるために、”まりがおか岬”から飛び降りたシイノに残された、ひったくりに追われていた少女からの綺麗な文字の手紙。それを、今までにない柔らかな笑顔で読むシイノ。
そして、駅でマキオが差し出した弁当(マキオ、本当に良い奴である。)を列車が発車する前から豪快に食べ始めるシイノ。
シイノは、そのままブラック企業に戻り、退職届を上司に破られながら、営業活動に戻る。
きっと、彼女はこの鎮魂の旅で、更に強く、優しき女性になったのだろうなあ、と年配の女性の家にセールスに行った姿を見て思った作品である。>
亡くなった親友との約束の旅
世界はどうしようもないことばかりだと残酷な真実を告げ、いくら心配しても届かないことがあると切り捨てながら、それでも生を肯定するのです。
残酷な現実を生き抜く 主役の親友同士の女性2人のうち、片方は開巻時点でこの世にいなくなっています。生き残った片割れが、遺骨を奪い、それを抱いで旅をするという、ひとりきりながらの「2人旅」。生と死を往還するロードムービーといえそうです。後ろ向きだけどポジティブ、重くて暗いのに見終わって元気が出るという不思議な作品。タナダユキ監督の力作です。そんな親友の死と向き合う主人公を演じるのは永野芽郁。こんな彼女の役側はこれまで見たことがありませんでした。朗らかで純真なイメージを封印し、やさぐれた顔で、柄の悪い話し方をするのです。優等生の裏の顔を見せられた気もしましたが、今を生きる若い女性の生々しい感情をさらけ出してくれました。
ブラック企業の営業職シイノトモヨ(永野芽耶)は、小学校からの親友イカガワマリコ(奈緒)が投身自殺したことをニュースで知ります。マリコは幼い時から父親(尾美としのり)から虐待され、彼氏から暴力をふるわれてきました。そんなマリコをシイノはずっとかばってきたのです。シイノは包丁を持って、マリコの実家を急襲し、父親の元から遺骨を奪い、マリコが行きたいと言った東北の「まりがおか岬」を目指すのでした。もうこうなったら、勤務先のことなんてどうでもよくなり無断欠勤。「クソ上司」からの着信も当然の如く無視するまででした。
物語は簡潔。シイノは岬に向かって突っ走ります。そして途中で引ったくりに合い無一文に。偶然であったマキオ(窪田正孝)という釣り人からお金を恵んで貰えたものの、その金で泥酔してしまい、港の小舟の中で眠るこけるのでした。シイノ自身がかなりブロークン(壊れている)のようです。
「マリコはなぜ、最期に一言も残さなかったのか」。その言葉を探し、旅に出たシイノは、遺骨と心中するような道行きだったのです。はたしてシイノは親友に「裏切られ」、1人残され、行き場を失った悲しみを乗り越える術を見つけることはあるものなのでしょうか。
「百万円と苦虫女」などを手がけたタナダユキ監督は、そんなシイノの姿を通し、行き場を失った悲しみにのたうち回る姿をまざまざと描きだしたのです。重い展開ですが、永野が演じるとカラッとした肌合いも残り、時に痛快にも感じます。ただ良くも悪くも、物語はシイノとマリコの関係に集約されていきます。その中で、彼女たちを追い詰める家族の事情、ブラック企業の描き方は紋切り型に見えてしまいました。
シイノの思いを描きだす彩りは複雑です。旅の道すがら回想場面が挿入されて、マリコとの太くて強いつながりが明らかになってゆくのです。思い出すのはつらいことばかり。マリコは長年父親に虐待され、さらにクズ男たちとわかっているのに自ら飛び込んで、ボロボロにされるのです。
シイノだけが頼りですが、壊れかけの自分を直しようがありません。孤独なシイノもマリコだけが世界をつなぐよすがなのに、目の前でリストカットするマリコを面倒くさがってもいたのです。それでも心温まる瞬間もあって、共依存の関係が切なく浮かび上がります。
思いが迷走し、勝手に死んだマリコが許せなくなったシイノは、自らも岬から飛び込んで死のうとしたとき、マキオがまたまた偶然現れて、シイノにさりげなく手を差し伸べるのです。シイノの迷いを晴らすのは、素っ気ないが親切な彼が示すシンプルな真理でした。「死んじゃダメ」と。
岬近くでのマキオとシイノの距離感を保った会話は胸に刺さる言葉があふれていました。切れ味鋭く人の弱さや悲しさを射抜く言葉があり、人の気持ちを穏やかに包むセリフも良かったです。シイノの鬱屈と激情が増すほどに優しさが際立ち、ふたりの静かな語り口の背後にのぞく切なさや強さが心に染みました。
タナダ監督は、世界はどうしようもないことばかりだと残酷な真実を告げ、いくら心配しても届かないことがあると切り捨てながら、それでも生を肯定するのです。「いない人に会うには生きてるしかない」のだと。その点がなんだかよくわからない『LOVE LIFE』の深田晃司監督とは大きく違うところでしょう。
永野が、たばこをふかし鼻水を垂らして泣き叫ぶ、粗野で直情のシイノを好演。マリコのはかなさと危うさを体現した奈緒とともに、映画に血肉を与えました。この岬の場面は過剰な演出を感じましたが、どっぷりと感情移入できたのは、ぶれない脚本とそれを生かした演出の力だと思います。
【ここからネタバレあり】
終盤、岬でマリコの遺骨が快晴の空に舞うのを見るときのシイノのアップ。背景を光るススキで埋めています。この場面、ロケハンでタナダ監督は逆光のススキに魅了され「撮る」と決めていたそうなんですが、季節が移ってしまい、現地で集めたそうです。
旅の終わり、駅でマキオに「ご恩は一生忘れませ」と神妙なシイノは、電車に乗るとマキオが用意してくれた弁当にかぶりつきます。そのマキオが別れを惜しんでいるというのに、弁当にがっつり集中。やっと電車が動き出してから、シイノは手をちょっと振ってあいさつしたことでなんとか救われた気分になりました。これがシイノの愛想なんて無関係な持ち昧なんですね。
もう一歩踏み込んでほしかった
予告でなんとなく内容を知り、永野芽郁さんと奈緒さんの共演ということで朝ドラ「半分、青い。」を思い出しながら、期待して鑑賞してきました。率直な感想としては、二人の演技は期待どおりのすばらしいものでしたが、内容はもう一歩踏み込んでほしかったかなという印象です。
ストーリーは、子供の頃からの無二の親友・イカガワマリコの自殺を知ったシイノトモヨが、マリコを虐待していた父親から彼女の遺骨を奪い、彼女の弔いと自身の心の穴を埋めるように出た旅すがら、マリコとの思い出を噛み締め、もう一度自分の人生と向き合っていくというもの。
序盤でトモヨの今の境遇、亡くなったマリコの生い立ちと二人の関係が、回想を交えてテンポよく描かれ、作品世界にすんなりと誘われます。予告で観た遺骨強奪からの逃避行、遺骨のマリコと対話しながらの小旅行、ふと蘇るマリコとの思い出の数々から、トモヨの傍にはいつもマリコがいて、それはマリコが遺骨になろうとも変わらず、トモヨの目には今でもしっかりマリコが映っていることがうかがえます。
回想が重ねられる中で、マリコが受けた虐待の酷さ、それがその後の人生に与えた影響の大きさ、トモヨへの異様なまでの依存などが明らかになってきます。一方で、そんなマリコを疎ましくも憎めず、本気で寄り添うトモヨの姿も浮き彫りになっていき、二人がどれほど互いを必要としていたかが痛いほど伝わってきます。でもそれは単なる友情というより、自分の価値や存在意義を確かめるよう関係性にも見え、たまらなく悲しかったです。
そんな大切な存在であるマリコを失った悲しみや喪失感を味わったトモヨが、一人ぼっちになった人生とどう向き合っていくかというところで終幕。余韻をたっぷり残した終わり方です。おそらくマリコの思い出を胸に精いっぱい生きていくのだと思いたいし、できればそこまでを描いてほしかったとも思いますが、こんな終わり方も悪くはないです。
ただ、悲しみに暮れてうちひしがれたトモヨを、窪田正孝くん演じるマキオが絶妙な距離感で支えるのですが、出会いの偶然が過ぎてもはやストーカーか何かかと思えるほどで、ここだけは違和感を覚えました。ひょっとして自身の経験からトモヨを気にして、ずっと跡をつけていたんでしょうか。
主演は永野芽郁さんで、割れたスマホに届く「クソ上司」からの着信をガン無視し、タバコをふかしながら周囲に悪態をつく姿はとても新鮮でした。でも、いつものかわいらしさは滲み出てしまっていたように感じます。一方、共演の奈緒さんは、死んだ魚の目をしたぶっ壊れマリコを見事に演じきっています。「あな番」でもそうでしたが、役が憑依したような彼女の演技は秀逸です。
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