マイ・ブロークン・マリコのレビュー・感想・評価
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キャッチ・ミー イフ・ユー・キャン
原作は購入、読了していたので
映画化されると聞いて楽しみにしていました。そして本日観賞。
「単行本一冊を映画にするって時間的に展開が延ばされてしまう?」と懸念していましたが
上映時間はおよそ90分なので無駄な追加要素はほとんどなく、むしろ原作でアッサリ流された部分のシーンを追加しているのでありがたい。
なにより90分は見やすい。
中身も個人的には満足。
上記にも書いたようにムダな引き延ばしがほとんどなく、イイ原作をちゃんとしっかり映画化してくれた、という感じ。
中身が良いから話題になったのに
映画化するとなると
監督や脚本家が張り切ったりお偉いさんが口挟んだりして中身が変えられる→中身が崩れて駄作になる、なんて事も多いので
今作はその観点からもこれまたありがたい。
演技の面でいうと
特にマリコと中学生時代のトモヨ、
この二人の演技が素晴らしく思えた。
窪田さんは野暮ったい格好しててもイイ男がにじみ出てる。
永野さんのガラ悪い演技珍しすぎて面白い。ちょっと似合わない所も含めて。
全体的に満足しましたが
ただ気になった事がなかったワケではない。
主人公の独り言が多い。
いや、正確に言えば多い事が問題じゃない。
独り言が多い人は家だろうが一人だろうが本当によく喋る。自分もその一人。
ただ独り言にしてはハキハキしすぎている。そこだけ舞台のように感じた。
現代のマイクなら小さい音でも拾ってくれるのでもっと独り言らしくボソボソと、なんなら観客が聞き取れるか微妙なレベルでもいいから声量や滑舌など気にせずに喋ってくれれば更に良かったな、と感じた。
まぁそこ差し引いても全然満足しました。
そ、そ、それ、俳句からは遠過ぎるだすw
今年の邦画のダークホース来た!w
タナダユキ監督が好きなんだと思います。と言うか、直近3作が「浜の朝日の嘘つきどもと」「ロマンスドール」「お父さんと伊藤さん」です。全部好きですもん。4打席連続長打、と言うか4試合連続ゴール、的な当たり感。だから、好きだと思います、じゃなくて好き、大好きw
堪らんなぁ。泥臭い人物設定。熱血でもなく、ニヒルでもなく。隣に住んでそうな女子とか、隣のビルで店を開いてそうな会社とか。男女が不必要にベタベタしないし、上から目線の説教もないし。なんと言っても、歯磨きするしw
いやー、映画の中で、歯磨きしませんよね、皆さん。結構w
要するに、まさに現在、日本のどっかで繰り広げられてる、どっかの誰かさんの物語であるよ、って素直に受け容れてしまえるんです。
でもって、リアルに泥臭くて、綺麗事にも無駄な感動話にもしないって言う。
やっぱり好きw
それと永野芽郁さんですよ。コレは来た。来ました。二皮くらいは剥けた感あり。長回しにたじろぎません。1人で物語を、難なく背負ってます。余裕で背負ってます。ラストシーンなんて、手紙の内容なんかどーでも良くなるくらいに演技だけでココロ持ってかれます。いや、彼女の中学生時代役の女の子も凄く良かったですけど。伊藤沙莉ちゃんを思い浮かべてしまいましたw
そうかぁ。タナダユキ監督作品って、どれも主演女優がめちゃくちゃ良い芝居してるんだ、そう言えば。あー、タナダユキ監督作品が好きな理由は、これかw
自分自身、今、スッキリ腹落ちしましたw
良かった。
とっても。
ワイルド永野芽郁
俳優さんたちの演技力を信じて、説明的描写を割愛した脚本なのだと思います
原作でどう描かれているのか、まったく知らないのですが、この映画では、次のようなことは具体的には描かれていません。
①マリコは児童養護施設に引き取られていないので、父親の虐待は、児童相談所に通報されるような傷が目立つようなやり方はしていないのではないか。つまり、それだけ父親は狡猾さも持ち合わせたモンスターである。(映画の中では、かなりキズやアザが目立っていましたが)
② 回想シーンでは、マリコは学校に普通に通えていたように見える。ということは、虐待の気配を感じながらもご近所や学校は見て見ぬふりをして問題の表面化を避けてきた。
③そのような過酷な境遇にいるマリコを、きっとトモヨだけが無視することなく友達で居続けた(トモヨ自身がマリコ以外の他人とはうまくやっていけなかったのだとしても)。そして結果的には、イジメっ子たちからも守ってきたのではないか。
クソ先生ども、クソ父兄ども、クソクラスメートども、という感じで。
モンスター父との闘いやマリコを取り巻く悪意や無関心(見て見ぬ振りをすることも含めて)との勝ち目の無い闘い…そういうトモヨの〝無鉄砲〟ともいえるクソ人間どもへの反発心が、読む者、見る者の共感を誘うのだと思います。
これらの描写を映画のストーリーの中ではくどくどと見せない。
この映画は、説明的な描写は敢えて控え目にして、永野芽郁と奈緒という、この作品のキャラクターになり切れる稀有な表現力を持つ女優ふたりにそれらの背景説明まで委ねてしまったのだと思います。
奈緒さんの悲しい笑顔が出てくるたびに泣いてしまうし、永野芽郁さんが、セリフ以上に雄弁な表情や仕草で必死に抗う姿に震えるほど感動してしまいました。
ついでみたいで恐縮ですが、窪田正孝さんの静かで説教臭く無い〝大丈夫〟もとても良いスパイスでした。
あのブラック企業のクソ上司も、ラストのほうの描き方からすると、意外と〝ただのクソではない、実はいい奴〟な感じがして、なかなか良かったけど、あの会社、いったい何を売ってるんだろう?とても気になります。
やっぱり永野芽郁
最初、このシーちゃんは永野芽郁の役かな?と思ったけど、いや永野芽郁じゃなかったらもっと重く暗くなってたろうし、永野芽郁だからずっと観てられたから、やっぱり永野芽郁だ。
タバコ吸う永野芽郁もいいな。
叫ぶ永野芽郁もいいな。
大丈夫に、見えるな。
やっぱり永野芽郁はいいな。
マリコは奈緒以外考えられない。
窪田正孝も良かったし、鬼畜父親が気の弱そうな尾身としのりなのも良かった。
ふたりの子ども時代の女の子たちもすごく良かった。
俳優さんたちがみんなこの人でなければ、って思えるほど好演してるのは、俳優さんたちの演技力は勿論だけど演出の力が大きいんだろう(川っぺりムコリッタの時も思った)。
演出にも演技にもすべてにおいて熱いものが感じられる作品でした。
(それ、とはえらい違い)
確かな手応え
共依存の2人
主人公のシイノはニュースで親友のマリコが自殺したことを知らされます。
マリコは幼い時から性的虐待、身体的虐待を受けていました。そんなクソ親にマリコの遺骨を渡すもんかと、マリコの家に行きマリコの父親から強引に遺骨を奪い取りました。
そしてシイノはマリコが行きたがってた海を思い出してそこへ向かいましたが、運が悪く着いた先でひったくりにあってしまって財布、携帯、マリコから貰った手紙、全部取られてしまいました。そして通行人のマキオに助けてもらいます。
海についてシイノは自分を残していったマリコに対して腹を立て崖から飛び降りようとします。そこでマキオに止められて遠くから助けて!と呼ぶ少女が走ってきました。
その姿がマリコに似ていたのでシイノはマリコの遺骨でひったくりの頭をぶん殴りました。マリコはキラキラと舞って海に溶け込んでいきます。シイノは家に帰るとマリコの父親の再婚相手のおばさんから荷物が届いていて、マリコからシイノへの手紙が出てきます。ここで終わり
マリコが自分と似すぎてて気持ちが痛いほど伝わりました。
毒親育ちゆえの依存性や愛に飢えてる可哀想な子です。
でもシイノに彼氏が出来たら私死ぬから!!とかいう癖に自分は彼氏作ったりとか彼氏が出来たらそっち優先で友達はほったらかし、別れたらまたシイノに頼ってくるところがクソキモかったです。そして最後まで自分勝手ですね。自分のこと大切に思ってくれてる相手がいるのに1人で逝っちゃうなんて。私の前の親友に似てます。あとメンヘラという一言ですませてはいけないくらいマリコはやばいですがこれを世間ではメンヘラって言うのですね。毒親育ちな子って愛に飢えてるから人に依存するしDV男も引き寄せる。ダメってわかるってるのに会いに行っちゃうところとかほんとに馬鹿だね。でもそういう子ってそうなりたくてなってる子じゃないから可哀想なんですよ。あたまではわかってるけど心が言うこと聞いてくれないんです。頭悪いんですよ。私がそうだから分かります。
予告編から永野芽郁が飛ばしてました。
シイちゃんが増えるといい
寄り掛かっていたのは…
マリコの境遇は幼い頃から悲劇的なものであるが、おそらく主人公シイちゃんもまた恵まれた境遇ではなかったのだろうと推測できる。
つまり、マリコとシイちゃんは似ていたといえる。
しかし肝心なところ、大丈夫か大丈夫じゃないかのところで二人は違っていた。
ところどころでシイちゃんを頼るマリコはとても弱い存在に見えるが、自分で違う道も模索できる力は持っている(彼氏をつくるとか)
シイちゃんに依存しているかに見えて、実はそんなに依存していないのだ。
しかし、その道でもマリコはひどい目に合うわけで「大丈夫じゃない」状態が限界を突破し、自ら命を断つこととなる。
一方のシイちゃんは、マリコほどではないにしろ良好とはいえない環境の中で生きてきた。
作中で更に悲劇的なことが起こっても、どこまでいっても「大丈夫に見える」
それはシイちゃんの中にある闘う意志が大丈夫に見せているように感じる。
彼女の闘う意志とは、一番に「マリコを守る」ことにあったように思える。
つまり、本当に支えられていたのはマリコではなくシイちゃんの方だったともいえる。
シイちゃんがマリコに依存していた。
この作品はマリコのためにシイちゃんが闘う最後の物語で、シイちゃんがマリコへの依存から抜け出す物語。
法も犯し危険なこともして、最後の闘いらしく無茶をしまくるシイちゃん。
しかし、何もかも捨てたつもりでいても、意外と何事もなかったかのように元の生活に戻っていく。
どこまでいっても「大丈夫に見える」
シイちゃんの一番の望みであった「マリコを守る」ことはできなかったけれど、マリコがシイちゃんの中に浸透したように思えるエンディングのシイちゃんは「大丈夫に見えた」
主演の永野芽郁はほわほわしたイメージがあって、そんな役しかできないように見えるけれど、彼女は中々の演技派で、荒ぶったシイちゃんをうまく演じていたと思う。
「地獄の花園」でもうまく演じ分けていた。
むしろ、海辺で倒れていても大丈夫に見えてしまうというのは、イメージ以上に強そうに見える人なのかもしれない。
トモヨとマリコの関係性が素敵な一本
<映画のことば>
「何かがあって、この町に来たのかも知れませんが、ヤケになってはダメですよ。風呂に入って、よーく寝て、ちゃんとメシを食わないと。人間、ろくなことが考えられなくなります。」
「そりゃあ、そうかもね。」
「ご自分のこと、大事になさって下さい。」
<映画のことば>
考えたんですけど。
もういない人に会うには、自分が生きてるしかないんじゃないでしょうか。
あなたの想い出の中の大事な人と、あなた自身とを、大事にしてください。
父親の再婚相手が届けてくれたのは、トモヨに宛てたマリコからの最後の手紙だったのでしょうか。普段はチャット並みの早さで既読になるはずのLINEは未読のままだったことと思いますけれども。思わぬところから「返信」があったということのようです。
遺書にも代わるようなその手紙を読んで、その内容に笑むことができるほど、トモヨとマリコとは親(ちかし)いというか、気のおけない、ざっくばらんな付き合いだったことが、偲ばれました。評論子には。
その関係性に、胸が熱くなるのを禁じ得ません。
トモヨは、きっと、その思いを胸に、したたかにマリコの分まで生きていくことでしょう。今も。これからも。
そんなことにまで思いを致してくれた本作には、評論子には、充分に秀作としての評価が当てはまりました。本作は。
(追記)
もちろん、本作のモチーフはマリコという女性とトモヨという女性…二人の女性の関係性にあることは疑いがないのですけれども。
しかし、マキオは、意外と重要な役割を果たしているのかも知れないと思いました。本作の中で。評論子は。
(評論子が本作の中から拾うことのできた「映画のことば」は、奇しくも、どちらもマキオのセリフでした。)
つかぬことを言いますが、本作のマキオは、実在したのでしょうか。
人物としては、一応は描写されてはいるのですけれども。映画作品としての本作の中で。
しかし、案外にマキオは、トモヨの自問の(架空の)相手だったと、もし仮定したら…。
トモヨ自身の思考の反芻として、自然に、これらの「映画のことば」が拾えたように、評論子には、思えてなりません。
そんな点も、観終わって、評論子には印象的な一本になりました。
生きててよかった
弔いの旅のキィアイテムだった「手紙」
手紙を読みながら思い出しては怒って泣いて
自分にはアンタしかいなかったのに
アンタには自分がいたのに
もう会えないんだ
一緒に死んでやってもよかったのに
と怒っていたシィ。
でも、死ぬって簡単じゃなくて
死んでも会えるはずもなくて
「もう一度会うには生きてるしかない」
の言葉で少し我にかえる
あっという間に日常は戻ってきてしまう
でも、、
生きてたから会えたね。
2人にしかわからないものがそこにはあって
目には見えない"絆"がみえた
--------------
シィちゃんと同じくらい安心する人を見つけようとしてたけど、シィちゃんと同じような人はいなくて、もう治せないくらいに感覚が麻痺してしまっているから
シィちゃん以外の人は誰がいい人なのかもわからない
マリコはいっそのことシィちゃんだけのマリコになりたかったのかな。
手紙の内容は想像してみたけどできなかった。
簡単に想像できるものでもないし
簡単に他人が言葉にしていいものでもない
ラストのシーンだけは
手紙の内容がわからないようになっていたのは
最適な締め方だと思う。
言葉にすることで2人だけの絆を
2人の想いや傷みをわかった気になってはいけない
ただ、2人はまた会えたんだなと思った。
「もう一度会うには生きてるしかない」
という言葉はこれまで聞いたことがなくて
最初はピンとこなかったけど
最後でこういうことかなと。
登場人物皆が痛々しい
自殺した親友の遺骨を毒親から奪って逃げるという強烈なストーリーに独特な空気感。
シイちゃんもマリコも登場人物みんなが痛々しい。共感できるわけではないのにセリフや行動がなんだか刺さるしぎゅっとなった。
子どもの頃からやさぐれてたシイちゃんとメンヘラのマリコ。2人を演じた永野芽郁と奈緒もよかった。奈緒ってなんでこんなにメンヘラ役が上手いんだろう(笑)
永野芽郁が不器用な「おっさん女子」を熱演
永野芽郁の演技力
評価がそんな良くないのは分かるけど私は好き
原作を1度だけ読んで面白かったな〜と単純に思って、何となく記憶に残っていたので映画鑑賞させて頂きました!ゆるーくゆるーく観るには本当に最高の映画ですね。
永野芽郁ちゃんの新たな一面を見れることですし、個人的に尺が短く原作を読んでいない人からしたら、少し物足りない印象を受けるような映画なのは確かだなとは思います。
壊れちゃった女の子、思春期に壊れちゃった家庭の女の子との付き合いっていうのはある人に取ったらとてつもなく心にグッと来る作品ではあります。
女の子同士って何だかんだ近いようで遠いんですよね、浅いことしか言えないですけど。男がいたら連絡がこなくなる等ね。女性なら何となく何でこんな男とまた会っちゃうの?なんで?なんて事の繰り返し。それも会っちゃうのも分かるんですが。
個人的に漫画を読んでいて、再婚相手のお母さんがお父さんを責め立てるシーン?叱責のほうが正しいのか、あの漫画を見ていて本当に記憶に残る、救われたシーンだったので映画の中で出ていて嬉しかったです。
浅〜い感想しか言えませんが、永野芽郁ちゃんにいろんな映画出てほしい!そんな気持ちになりました!
永野芽郁の代表作になる
どちらかというと、朝ドラのあのイメージの女優さんが、ここまでの役を演じ切るとは驚きだった。
タバコを吸う仕草や上司に悪態ついちゃうところなど、驚きの連続。
圧巻だってのは、虐待の父親から骨を奪う場面だ。
純粋に本当にマリコを大事に守ってきたんだなと心が震えた。親友という言葉では語れない絆が2人にあった。
海を見せに連れて行く。思い出の中のマリコとの会話。
奈緒演じるこのマリコがまた本当に哀しくて可愛いのだ。
与えられた環境でどう生きるのか、マリコのために日常に戻っていった。2人で生きていくんだろうな。
良い映画だった。
アタシとマリコは生きていく
シイノとマリコ。
二人は大親友。
性格も口調も姉御肌なシイノに対し、マリコはピュア。真逆の方が上手くいく。(例えば、黒澤明と本多猪四郎)
他愛ない話をして、夢を語り合って、悩みも打ち明けて。
学生時代から一緒。これからも。いつか一緒に暮らして、おばちゃんになっても。
ずっと、ずっと。
そんなマリコがある日突然、死んだ。
マリコは父親から虐待を受けていた。
ある時付き合っていた彼氏からも暴力を受けていた。
シイノはその都度力にはなっていたが…。
マリコはアパートから飛び降り自殺。ニュースでそれを知って絶句。
自分は親友を助けてあげる事が出来なかった。
そんな亡き親友の為に、今、自分は何が出来るのか…?
いつか話していた二人で海に行く。
シイノはマリコの遺骨を奪い、親友と最後の旅に出る…。
アパートに乗り込んで両親から遺骨を奪う。
仕事も放っぽり出して。
やってる事はムチャクチャだが、根底にあるのは女二人の美しく、感動的な友情。
…そんな綺麗事だけじゃない。
“親友”と言ったが、確かにそうではあるが、それ以上のものを感じる。もっと濃密な。
一見シイノがマリコを支えているようだが、シイノ自身もマリコに支えられているような気がする。
マリコがシイノに助けられているようだが、マリコもシイノを助けているような気がする。
お互い相手に依存しているようであり、本当に自分にとって、居なくてはならない存在。
自分の一部。身体の一部。心の一部。一心同体のような。
だからこそ見えてくる、明るくてキャピキャピキラキラだけじゃない関係性。
シイちゃんの子供になりたい。
シイちゃんに恋人が出来たら死ぬから。
そのくせ、自分は恋人を作る。
自由奔放、天真爛漫とは違う。何処か“壊れている”マリコ。
シイノの目の前でリストカット。何か無い日なんて無い。
その恋人から暴力。フライパンを振り回してまで守るシイノ。が、会いたいと言われ、会いに行くマリコ。腕を骨折…。
激昂するシイノ。バカじゃないの! ぶっ壊れてるんじゃないの!?
そうだよ。ぶっ壊れてるの。何処から直したらいいか分からない。
父親からは虐待だけじゃなく、性的強要も。
誘った私が悪い。
ピュアだが、儚げで、今にも壊れそう。いや、壊れている。
そんなマリコを、時々面倒臭く思うシイノ。
どんなに仲良くても、相手を煩わしく思ったりする事もある。
相手を本気で思うからこそ、苛立ち、キツくなったりする。
綺麗事だけじゃない、リアルで生々しい感情のぶつかり合い。
だからこそ、胸に迫る。
永野芽郁と奈緒が体現。いや、シイノとマリコとして、そこに存在。
永野芽郁は新境地。キュートなイメージを捨て、足をおっ広げて煙草を吸い、啖呵も切るやさぐれ感。その雰囲気や佇まいにカッコよさすら感じる。
奈緒の今にも壊れそうで、危うくて、繊細で複雑な演技は絶品。ちょっと恐ろしさすら感じたほど。
永野芽郁は普段は煙草を吸わないらしいが、役の為に吸えるよう練習。奈緒も劇中で読まれた手紙は数通だったが、読まれなかった手紙も自分で書く意気込み。
NHKの朝ドラで共演して以来、プライベートでも仲良しという二人。再共演も願っていた。
役作りも役へののめり込みも、やり取りもお互い思い合う様も、ただ演じただけじゃない。本物の感情のようだ。
他キャストはそんなに多くないが、窪田正孝が好演。
ひったくりにバッグを盗まれてしまったシイノの前に、たまたま通りすがった青年。遺骨の番してくれたり、お金を恵んでくれたり、歯みがきを差し入れたりと親切。
「ここ、死ねないんですよ」と、何が訳ありの過去。
「もう居ない人と会うにはあなた自身が生きていかなければならないんでしょうか。あなたの中の大事な思い出とあなた自身を大切にして下さい」…別れ際の彼のこの台詞が素敵だ。
尺は90分弱。その中に、インパクトあるストーリーやメッセージ、テーマ。名作コミックを巧みに映像化。
ハートフルでコミカルな中にシビアさや感動も。
硬軟併せ持ったタナダユキの演出。
思い立った旅の果てに、アタシはマリコの心に辿り着けたのか。何かしてあげられたのか。
またいつもの生活に戻る。クソみたいな会社、つまらない人生。
もうマリコは居ない。その喪失は深すぎる。
ねぇ、アタシはどうすればいいの…?
迷いそうになった時、思い出す。今もまた、手紙を読んでこみ上げてくる。
ずっと忘れないこの気持ち。
アタシが生き続けていく限り、マリコもアタシの中で生き続けていく。
あの頃も、今も、アタシとマリコは一緒。
一緒ならば、きっと生きていける。
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