劇場公開日 2022年9月30日

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「共依存を恐れた互いのの思いやりが悲劇を生む...  適度な距離感を模索しつつもついぞ持ち得なかった女性二人の物語」マイ・ブロークン・マリコ O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0共依存を恐れた互いのの思いやりが悲劇を生む...  適度な距離感を模索しつつもついぞ持ち得なかった女性二人の物語

2022年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 "大人の女性のためのWEBマンガ誌"「COMIC BRIDGE online」にて数年前に短期連載された漫画の映画化作品で、予告編を観ての"親友の遺骨を強奪した女性が旅をする"という筋立ての奇矯さに惹かれて鑑賞しましたが、原作未読の男性にとっても十二分に意義深い内容でした。
 原作漫画での紙幅の都合も有ったのでしょうが、登場人物の背景や結末について敢えて伏せられたり曖昧にされている部分が多く、一方で物語としては然程入り組んでいるわけではないため、内容について特に各人の心情について考察するのが好きな人にはうってつけの作品のように感じました。
 "遺骨と旅する女"というモチーフだけで絵画でも成立しそうな物語の奥行きを感じさせますが、その工程だけでいうとマリコが生前に行きたいと言っていた田舎の港町の海に行って帰ってくるだけであり、途中でひったくり犯や不審者に出くわすもののそれが主人公や物語に劇的な変化をもたらすということはありません。あくまで主人公シイノが親友マリコの死を受け止めて彼女への気持ちにどうにか折り合いをつけるまでの心の物語となっています。
 登場人物が極端に少ない本作ですが、とりわけ主人公シイノの親類縁者が一切出て来ないことが気になります。既に他界されているのか、それとも彼女も親から不遇な扱いを受けて縁を切られているのかあるいは自ら切ったのか…。
 シイノがその後、家族を持つにせよ一人を貫くにせよ、月並みな言葉ではありますがやはり、マリコの分も強く気高く生きてほしいと思います。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)