「ホラー映画が粗製乱造される今では拾い物の良質な怖さ」きさらぎ駅 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
ホラー映画が粗製乱造される今では拾い物の良質な怖さ
原案は2ちゃんねる=ネット発の都市伝説らしく、「電車男」「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」と同じ系列である。
「電車男」はさておき、他の2作はいわゆるゲテモノ、キワモノ扱いなためか、予算が小さいらしく全体的にチープ感が漂っているが、実は2つとも良作である。
本作の場合、チープ感は役者、演技、大道具、小道具、映像と全体を覆っているから、観る方は何も期待しないで見始める。
異世界の違う駅? なにやら筒井康隆の「熊の木本線」じみてるな。けど、ろくに大したこと起こらないじゃないか。何だかバケモノに襲われるらしいけど、しょぼい襲われ方だな…等々、小馬鹿にしながら見ているうちに、線路を歩いてトンネルを抜けていくうちに、あら不思議、じわじわ怖さが浸透してくるのである。
助けてくれた乗用車に乗ったらドライバーも実はバケモノだったり、ヒイヒイ言いながら民家の集まっている場所にたどり着くと、そこにはバケモノ化した仲間がいたりと、展開が読めないし飽きさせないし怖い。
また、異世界から帰還した女性の話を基に、自分も異世界に挑んだ学生が今度は脱出できなくなったり、最後には帰還女性の娘の女子高生まできさらぎ駅に行ったり…そのトリックが楽しく、あの女子高生はどうなるんだろうと想像するのも面白い。
ホラー映画は依存性の強いドラッグのようなもので、強烈なホラーを大量に観てしまうと、恐怖感覚が麻痺する結果、どんなホラーもろくに怖く感じられなくなるという副作用を持っている。
小生などその重症患者で、もはやリングや呪怨系の派生作品などコメディにしか見えない。作り手も1つヒットすると、同じ怖がらせ方の同工異曲の作品を粗製乱造するから、今ではホラー映画になど食指がいささかも動かないのであるw
その中でたまたまぶつかった本作は、久しぶりに拾ったホラーの佳作だった。