劇場公開日 2022年6月3日

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「上映館が少ないのがもったいない」きさらぎ駅 SIDさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5上映館が少ないのがもったいない

2022年6月7日
iPhoneアプリから投稿

なんと費用対効果の良い作品か!少ないロケ地、少ない登場人物、安っぽいCG…誰の目にも金がかかっていないのが分かる。しかし、内容は決してチープではない。面白い。ストーリーがよく練られている。オカルト色は薄味だが秀逸なサスペンスに仕上がっている。伏線の前半と回収の後半で違いを楽しめる。オチはなるほど!「世にも奇妙な物語」風でタモリさんが出てきそうではあるがエンドロール後まで心地よい緊張感を楽しめる。ワンカメ一人称視点の不安な映像構成も作品に躍動感を与えゲーム好きの世代にもアジャスト。またコストも安上がり。一方、配役も絶妙。全裸監督で一躍注目、滲み出る薄幸感が逆に魅力的な主演の恒松祐里。元グラビアアイドルとは言わせない妖艶さとオーラを漂わせる影の主役、佐藤江梨子。そして、鎌倉殿で独特の存在感を発揮してバズった芹澤興人ら、超人気俳優ではないが超一流の実力派を厳選して起用している。ほんと上映館が少ないのがもったいない。映像作品はもはや映画館やテレビではなく好きな時間にネットで繰り返し見る時代。作り手は最初からネット展開を見越してこの作品を作っている。作品性や作家性にこだわって自己満足するのではなく、VODで見てくれる人の属性や年齢層などを割り切っている。製作単価は安いがいずれはプライムビデオなどで評判になること間違いなし。サブスクで映画を観るのが当たり前の時代に安価でも刺さる作品を作るためにはどうすれば良いかを示す、お手本のような映画だと思う。

SID