「架空を通して観る現実」チェルノブイリ1986 N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
架空を通して観る現実
チェルノブイリ原発事故(事実)を舞台に、
その終息に尽力した主人公たちの物語(架空)だ。
この手の作品は二手に分かれる。
一つはヒーローとしてたたえまくる。
もうひとつは悲劇を啓蒙する。
自国の大事故だけに前例でくるのか、と思いきや
内容は後者に重きが置かれていた。
面白いなと思えたのは事実に沿いながら
そこに従事する架空の人物の物語を追うことで、
事故が与えた影響というよりも
ある人物が人生の中で遭遇した事故、という視点に変換されるところだった。
そんなあったかもしれない物語を通して観ることで、
事故を事故として理解するより身近に感じられたような気がしている。
これは翻訳の関係なのかどうかわからないが、
冒頭で主人公と相手役の彼女、そしてその子供の関係がどうなのか、
最後まで明確に言葉で説明されることのないまま進むのだが、
それでも理解できる見せ方がとてもうまいな、と始終感じながらがら見ていた。
HBOの「チェルノブイリ」も鑑賞済みだが、
主人公の最終ミッションはそこにもしっかり描かれており、
事故処理全体のどの部分を担った人物なのかを知りたい場合、
鑑賞するとよく分かるのでお勧めしたい。
また過去、他にもいくつかロシア映画を見てきたが、
ロシア映画に出てくる女性は強い。
今回も申し分なく強かった。
ブラボー。
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