劇場公開日 2022年9月1日

「失笑、失笑、また失笑。そして最後は大爆笑」この子は邪悪 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5失笑、失笑、また失笑。そして最後は大爆笑

2022年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2017」準グランプリの映画化と聞く。

過去、
〔嘘を愛する女〕
〔ルームロンダリング〕
〔ブルーアワーにぶっ飛ばす〕
〔ゴーストマスター〕
〔水上のフライト〕
〔哀愁しんでれら〕
〔マイ・ダディ〕
〔先生、私の隣に座っていただけませんか?〕
と観て来たが、
1/3はまずまず、1/3は首を傾げ、
1/3は何故映画化を、と疑問に思う出来で、
はっきり玉石混交の作品群。

多くの特徴に挙げられるのは、
アイディアとプロットまでは良いものの、
脚本の練り込み不足とディティールの造りの甘さ。

勿論、本作とてそれは例外ではなく。

五年前に交通事故に巻き込まれた一家がいる。

父『司朗(玉木宏)』は右足に麻痺が残り、
母『繭子(桜井ユキ)』は病院で昏睡状態が続く。

妹『月(渡辺さくら)』は顔に大火傷を負い、
仮面を着けての生活で外に出ることも無い。

一人軽傷だった姉『花(南沙良)』も、
家族に対する負い目から引き籠ってしまっている。

ところが、突然、意識を取り戻したとして、母親が家に戻って来る。
容姿が変わっているのは整形の為と父は言うが、
過去の記憶や行動は実母そのもの、
最初感じた不信感を『花』は胸の奥に仕舞い込む。

しかし観客の側は、ここで黙っているわけにはいかず。

おいおい、五年も寝たきりだった人は、筋肉が衰え
歩くことさえままならずハズと突っ込みたい。

相当期間のリハビリなしには家庭復帰などできぬだろう。
そこをすっ飛ばしてのこの流れはあんまりでは?

さらに、いくら引き籠りとは言え、
入院中の母親を一度も見舞ったことはないんかい!
それがあれば、整形の有無も気づくだろうに。

もっとも、鑑賞者が疑念を持つことを前提の仕掛けであれば、
たいしたものと感心するのだが。

一方に、母が奇病に冒されてしまった、少年『純(大西流星)』がいる。
彼は『花』とも以前に会ったことがある様子。

『純』は自身の母と同じ奇矯な行動を取る人間が
甲府市内に複数人いることを突き止め、
それらが何れも過去に『司朗』と関わりがあったことから、
精神科医の彼こそが元凶と疑い始める。

と、まぇここでもねぇ、一介の学生が不審に思うなら
地域住民は更に早く気付くだろうし、
最終的にタネ明かしされる仕掛けは、
当該者が何年も生きること自体不可能と思われる。

それ以外にも、掛けた暗示が簡単に切れてしまったり、
疑っている人間に容易く気を許したり、と
脚本のご都合主義は連続。

ことほどさように本作は、ストーリーを展開させるためだけの
安直な設定のオンパレード。

直近の「朝ドラ」を遥かに凌ぐ進行は、ある意味徹底している。

サイコスリラーのようでもありミステリーのようでもある。

一連の事件の謎解きはされつつ、そのネタもほぼほぼ失笑レベル。
監修として催眠療法の専門家は入っているものの、
正直、〔ドラゴンボール〕の『ギニュー』隊長を想起してしまったが(笑)。

詰めの甘さは、登場人物にまで蔓延、
わけても最後のシークエンスにそれは顕著。

幾ら年寄りとは言え、やる時は
徹底的にやらんかい!!と、義憤さえ覚える。

そして最後のシーンは、ああやっぱりやっちゃったよとの
爆笑の場面。

どうやったら、これが可能になるんですか?と、
脚本/監督の『片岡翔』に問うてみたい。

失笑、失笑、また失笑。そして最後は大爆笑

ジュン一