「今までと同じ気持ちでウサギを見ることが出来なくなる作品」この子は邪悪 最凶線さんの映画レビュー(感想・評価)
今までと同じ気持ちでウサギを見ることが出来なくなる作品
個人的に密かに注目してるツタヤクリエイターズプログラム。
ツタヤ主催の若手クリエイター発掘のための賞レースですでに「嘘を愛する女」「哀愁しんでれら」「先生、私の隣に座ってくださいませんか?」などの作品が映像化されている。
そんなツタヤクリエイターズプログラムの2017年準グランプリであるGREEN FUNDING賞を受賞した作品が「この子は邪悪」である。
タイトルに邪悪というワードが入ってるように、まずオープニングからして不気味な雰囲気が漂いまくっている。
マンションの廊下で感情を一切感じさせない虚ろな目で虚空を見つめる四つん這いの女性。
アパートのベランダで手すりを這い登る芋虫を手でつかみそのまま口に入れて咀嚼する男性。
散らかった部屋で泣いている男の子には何の関心も示さず空虚な表情でジッとしている女性。
そしてそれらの人物を陰から撮影し観察をしている謎の少年。
様子がオカシイという表現では足りないくらい不気味な人たちの描写がなんの説明もなく積み重ねられていく。
そんな不気味なオープニングが終わると主人公の生い立ちが語られていく。
主人公は窪心理療法室という心療内科を営む父・窪司朗の長女・窪花。
その心理療法室では父・司朗が退行催眠という怪しげな治療を行っている。
その心理療法室ではなぜかウサギを大量に飼っている。
そんな窪一家は、5年前に遊園地に行った帰りに交通事故に遭ってしまい、父は右足が不自由に、母は昏睡状態に、妹は顔に大ヤケドを負ってしまう。
しかし、花はほとんど無傷であったため家族に対して負い目を感じていた。
そんなある日、昏睡状態だった母が目覚めて家に帰ってくる。
奇跡が起きたと喜ぶ父だったが、帰ってきた母を見た花は違和感を感じる。
「私の知ってるお母さんと顔が違う気がする‥‥」
その違和感を父に伝えると、事故のあとに整形をしたから印象が違うんじゃないかと説明される。
違和感を感じながらも、母が戻ってきた日常に次第に慣れ始める花。
そんな花のもとに冒頭の謎の少年が現れる。
実はその少年の母親は隠し撮りをしていた不気味な人たちと同じ症状を発症していた。
そして少年は症状がある人たちの共通点が窪心理療法室の患者であることを突き止めて花に近付いてきたのである。
少年は花に「妹さんは事故のときに亡くなっている」と告げる。
さらに「お母さんが意識を取り戻す前にお母さんにソックリな人を見たことがある」と告白する。
そんなはずはないと戸惑う花だったが、次第に自分の家族は偽物なんじゃないかという疑念は深まっていく‥‥
と、序盤のあらすじだけでもだいぶサスペンスな展開が目白押しだったけど、後半はとにかく驚愕の事実がどんどん明らかになっていってビックリしきりでした。
まず、花の疑念の通り母親と妹の身体が全くの別人だったという事実が判明する!
母親の身体は父の心理療法室に来た患者の女性のもので、妹の身体は5年前に行方不明になった少女のものだった。
しかも、身体は別人なものの中に入っている魂自体は母親と妹本人のものという、またなんともややこしい事実が明るみに出る。
実はこの父親、事故で生死の境を彷徨っていた母親と妹を救うため、退行催眠をかけることで他人の身体から魂を抜き取り、空っぽになった身体に母親と妹の魂を入れ込んでいたのだという。
しかも、元々身体の持ち主だった人たちの魂はウサギの身体に入れるという、家族を救うためとはいえサイコパス認定間違いなしの超ドン引きの凶行をしていた。
って感じで、父親役の玉木宏が一見良い人そうに見えて実はめちゃくちゃヤバい人だったという恐ろしい展開が繰り広げられる。
ただ恐ろしくはあるものの何とか自分の家族を守るために狂気に駆り立てられてる姿は、どことなく切なさとか哀愁も感じられて玉木宏のベストバウトなんじゃないかとすら思いました。
とにかくこうゆうサイコホラー系のストーリーが大好物なので、個人的には大好物の作品でした。
ウサギに入れ替えられた人たちがあの後どうなったんだろうって考えると鳥肌が止まりません‥‥笑
あと、ラストのオチも読めはしたけど切れ味が鋭くてとても好きでした〜