「あくまで私の見方ですけど」N号棟 1番レジ~さんの映画レビュー(感想・評価)
あくまで私の見方ですけど
一番ヤバいのは住民でも管理人さんの羽織でもなく、
主人公ただ一人でしたって感じかなと。
良くも悪くも、壮大な妄想オチだと捉えました。
私達も、知らず知らず主人公の妄想の視点と恐怖を共有したあと、それが主人公一人の妄想で一番ヤバいのは主人公だけでしたと気づいた時の新たな恐怖という、妄想オチの二段オチ。
考察ってほど大したことではありませんが、
団地に到着した時、各部屋の窓辺に住民がズラリと立っているのを主人公が見てたじろぐシーンがありました。
しかし、ラストでN号棟全体を映す引きの映像では、窓辺に立っているのは入居しちゃった主人公一人でした。
これは、最初は主人公目線を私達も見ているけど、ラストは主人公の目線を離れた結果、主人公が一番ヤバいのがやっとわかるってことなのかなと。
入居しちゃってるから確かにヤバいんですけど、それ以前の窓辺に住民がズラリと立っているところからすでに、主人公の妄想は始まっていたように思います。
いや、むしろカラスを棒で突っついていた時から…?
いやいや、むしろ元カレと今カノは来ておらず、主人公が三人で来たと妄想していただけなのかもしれません。
元カレは「今カノと今度ロケハンに行くんだ」と言って主人公の部屋を出たきり、本当はもう主人公のそばにいない気がします。
キャンパス内で元カレにちょっかいを出して部屋に誘うくらい、元カレと切れたくなかった主人公。
元カレも大概ですがヤッベェ女です。
きっとそんな性格ゆえ自分が立ち入ることの出来ない元カレと今カノの時間に嫉妬を抱き、もうそこから突然三人で団地に来たシーンに「主人公の頭の中がなっちゃった」んだろうなと思います。
どメンヘラです。
団地での時間があれほど惨劇と狂った思想に満ちていたら、三人もいれば誰か一人くらい警察に通報したり脱出できるはずです。
それなのに住人から出されたお茶をまだ飲むのかよ!!ってくらい飲んだり、団地の部屋で恐怖から元カレと焼け木杭にちょっと火がついたりと、恐怖のわりにかなりチンタラやっているような気がしました。
あと、近所から苦情が来るから夜は出歩かないで、と住民のリーダーは言っていましたが、全戸総出で心霊現象にビックリして夜に悲鳴を上げたり、転落して亡くなった親子を張り付けにして焚き火で儀式をしたり、そら苦情も来るだろうよって感じでした。
でも大丈夫です。
だってその団地にはもう誰もいませんもん。
入居者は主人公以外誰もいませんってラストが教えてくれています。
だけど本当は最初からそうだったし、だけど主人公は今も一人ではないと思っているのかいないのか。
一見すると矛盾を感じる点も、まぁ全部妄想なら了解!って感じです。
それでも怖いけど…
序盤で意識のない母親の人工呼吸器を止めるよう勧められるシーンや、睡眠薬を常用するシーン、大学の教授から死に関する指南を受けるシーンなど、そんな頭の中を形成したであろう出来事が描かれていたので、あぁ、こうやって妄想脳になっていったんですね、納得しました、って感じです。
妄想と感じたらもう何を考察しても妄想だからなぁ…で片付けてしまいたくなるので、もう少し何オチなのか考え込む複雑さはあっても良かったのでは…と欲張ったことを考えてしまいます。
エンドロールで当時のマスコミに取り上げられた記事が紹介されており、私も当時の騒動はよく覚えているので、最後の最後にこの映画に出たN号棟ははどこまでがフィクションでどこまでが本当にあった描写なんだろう…とまた怖くなりました。
主人公を演じた萩原みのりさんのどこか不健康そうなメイクと、静・動・狂の演技は見事にヤバかったし、
筒井さんの上品な出で立ちで怖いこと言う不気味さも本当にバクバクしましたが、何より管理人さんの羽織の柄が一番嫌でした(褒めてます)。
本物の団地といい管理人さんの羽織といい、案外オチがないものこそ一番怖いのかもしれません。