劇場公開日 2022年4月22日

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「子供は大人の写し鏡」カモン カモン シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0子供は大人の写し鏡

2022年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

マイク・ミルズ監督は『人生はビギナーズ』という作品のみ鑑賞した記憶がありますが、内容はもう全く憶えていません。本作も非常に優れた作品でしたが、(悪い意味ではなく)恐らく直ぐに内容は忘れてしまう様な気がします。
ひょっとしたら、この辺りがこの監督の特徴というか持ち味なのかも知れません。
本作も非常に哲学的な部分もあり、テーマを理解するにはかなり難しい作品だと思います。でも感覚的に愛すべき作品だと思えましたね。
それと、モノクローム映像も非常に美しくL.AもN.Yもこれほど美しく感じられた作品は珍しいです。

少し前に観た『大人は判ってくれない』から62年も経つと“大人”もかなり変わったようです。
というか、あちらは子供目線からの内容でしたが、本作での伯父(大人)と甥(子供)は対等に描かれていたのでそう思えたのでしょう。
子供は62年前から何ら変わることのない存在ですが、大人は62年前からすると社会の変化に伴いかなり変化したのかも知れません。
62年前ではどんな生活レベルでも家庭を持ち子供を作るのが一般的な共通認識だったと思いますが、今はもっと個人の自由が尊重されて、家庭も持たず子供も持たないという本作の伯父(ホアキン・フェニックス)の様な存在もかなりの割合でいます。(私もその一人)
なので、日常生活で子供と全く接する機会のない大人達も増えてきて、そういう大人達が子供と接することにより不思議な化学反応が起きてしまうのかも知れません。
かいつまんで話すと、大人が子供に対して真面目で真摯な姿勢で対応すると、“子供”という存在の従来の概念が覆さてしまうというお話なんだと思います。

正直言って『大人は~』が作られた時代の大人(親)が子供に対する教育って、生活レベルによってはかなりいい加減(放任)で学校任せだったような気がします。逆に言うと今はどんな生活レベルであっても熱心(過保護)過ぎる傾向を感じられます。
昔の親の子供に対する対応の多くは見え透いた嘘ばかりでその場を誤魔化すといういい加減さから、今の大人の対応は全く現実的でない綺麗ごと(正論)を大真面目に並べ立てる妄信型に変わってきた様に感じます。
本作では伯父がジャーナリストという職業で、冒頭で色々な子供達にインタビューをし、その回答が余りにも大人びていて、観客の誰もが凄いと感じてしまうのですが、恐らくそれは上記した今の教育の在り方のせいであり、子供自身の意見というより幼少時の教育の成果が、あの大人びた回答になってしまっている様に感じられます。
しかし子供自体は昔の子供となんら変わらず、本作の様に普段子供と接する機会のない大人が一時的でもリアルに子供と向き合わされると、大人側の実態が子供に鏡の様に写し出されてしまう結果になってしまう。結局大人と子供とは対等であるというお話だった様に思います。
主人公に子供がいないという設定が、非常に利いていたのだと思います。
“だからどうした”という事は、鑑賞した観客の立場によって各々受止め方が違ってくるのだと思いますが、だからこそ私には興味深く観ることが出来ました。

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シューテツ